1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10630062
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
稲垣 秀夫 四日市大学, 経済学部, 教授 (70159937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 繁則 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (70214509)
森 徹 名古屋市立大学, 経済学部, 教授 (60134160)
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Keywords | 診療報酬支払制度 / 個別出来高払制 / 定額払制 / 診療報酬制度改革 / 実験経済学 / 医師 / 患者 |
Research Abstract |
10年度の調査・研究では、診療報酬支払制度では主要な米国等の個別出来高払制と英国等で実施されている定額払制、および両方式を組み合わせる診療報酬支払制度を比較検討し、日本の診療報酬制度改革の方向を考察した。次に医療報酬支払制度の機能に関する理論モデルの理論的検討を行なった。また、医療報酬支払制度の実験システム構築に向けて、機器の準備および専門家への依頼を含むネットワークプログラミングの作成に取りかかった。同時に、平成11年度に予定している本格的な意思決定実験の前に、予備的な実験を帝塚山大学経済学部学生を被験者として行った。 英国と米国の診療報酬支払制度改革の比較検討では、英国では定額支払に個別出来高払の要素を、逆に出来高払制度を核する米国は定額支払を取り入れる方向で改革が行われていた。両国とも個別出来高払と定額払の最適な組合せを探求していることが判明した。日本の診療報酬制度改革は支払方式の最適な組合せ方法を諸外国から移植するのではなく、独自の最適な組合せを探求する方向で行われるべきことを指摘した。 医療報酬支払制度の機能に関するモデルでは、患者は医療機関の選択権を持たないかあるいは持っていても限定的であった。このため、これらの医療経済モデルを患者が医療機関の選択権を持つ動学的医療経済モデルに拡張し分析を行った。理論分析の結果は、各医療機関に支払われる診療報酬額は個別出来高支払から包括的支払への移行直後に大きく低下するが、患者による医療機関の選択が進行するに伴い、個別出来高払制度下の診療報酬額とほぼ同じ水準に収束していく可能性があるというものであった。 また、定額支払制度下では利潤最大化行動が想定される医療機関は利潤増加のため最低限度の医療水準を患者に供給することを選択するという理論的予想を、実験経済学的手法を用いて予備的実験で検証した。結果は医師役の被験者が利潤が最大となる治療水準を選択しないというものであった。実験結果と理論的予想の相違は、医師を病院(経営者)と患者の立場を代表する代理人として統計的処理を行ったところ、医師役の被験者は病院と患者の立場をほぼ同程度に考慮していることが判明した。現在、この研究結果に関する発表論文は作成しているところである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 稲垣秀夫, 鎌田繁則, 森徹: "米英の診療報酬制度改革の実状と日本の展望" オイコノミカ(名古屋市立大学経済学会). B5巻・1号. 51-63 (1998)
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[Publications] Inagaki. H, S Kamata & T. Mori: "Paitiens′ Selection of Medical Institutions and Dynamic of Medical Expeneses under Prospective Payment System" Faculty of Economics, Nagoya City University, Discussion Papers. (1999)