2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10630074
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤井 実 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90162536)
|
Keywords | 軽機械工業 / カメラ / ミシン / 自転車 / 公設試験研究機関 / 工場診断 / 中小企業政策 / 規格制度 |
Research Abstract |
本研究の最終年度に当たる本年度には軽機械諸産業の発展を支えた制度的諸条件(インフラストラクチャー)、すなわち各種工業組合・協同組合などによって構成される業界団体の活動、通産省・中小企業庁・地方自治体・民間経営コンサルタントの活動、輸出検査の実態と検査員の養成方法、中小企業関連の政府系金融機関・信用組合・相互銀行などの役割についての検討を継続するとともに欧米での近年の中小企業史研究をサーベイしながら、1950年代におけるわが国輸出軽機械諸産業の国際比較の視点からみた特質、戦前・戦中の雑貨輸出との異同などを検討した。なお公設試験研究機関に関する研究成果の一部を、「戦後復興期における公設試験・能率研究機関の活動:大阪府立工業奨励館と大阪府立産業能率研究所を事例に」(原朗編『復興期の日本経済』上・下巻、東京大学出版会、平成13年度刊行予定)に纏めた。 以上の調査を通して大阪の軽機械諸産業の発展にとって府立の試験研究機関および貿易館と業界団体との連携がきわめて重要な役割を果たしたことが判明した。しかし1960年代に入って中小企業の技術水準が向上するにつれ、公設試験研究機関はその動きに対応した新たな役割を果たすことが求められるようになった点にも留意する必要がある。また戦前・戦中からの遺産を継承しつつ、戦後直後から全国的に見ても体系的・先進的な中小企業政策を展開した大阪府であったが、中小企業庁の成立を契機とする中小企業政策手法の全国的展開の中で次第にその独自性を低減させていった。その意味でも1950年代は戦前の雑貨輸出に関連する中小企業の発展を支援した制度的諸条件(インフラストラクチャー)が軽機械工業の振興策に継承されるとともに、新たな政策展開を要請されるようになる時代であったように思われる。
|
Research Products
(1 results)