2001 Fiscal Year Annual Research Report
日本の地域社会における戦時から戦後への変容過程に関する実証的研究
Project/Area Number |
10630078
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大門 正克 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (70152056)
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Keywords | 戦時動員 / 戦後改革 / 農村 / 都市 / 京浜工業地帯 |
Research Abstract |
今年度は、今までの調査でまだ十分に行えなかった農村部の史料調査・収集・分析と、都市部で収集した史料のいっそうの分析を進め、本研究のまとめへと向かった。農村部では、岐阜県長良郡で旧長良小学校の史料収集・分析を進めた。長良小学校では、戦時から敗戦後にかけての農村杜会の変動を知ることのできる卒業生台帳や国民学校時の史料を収集した。また都市部については、今まで収集した、東京大学杜会科学研究所所蔵の京浜工業地帯調査史料の分析を本格的に進めた。この資料は、1950年の時点で、川崎市大工場で働く50名について行った聞き取り調査であり、出身地・生家・続柄・教育歴・職歴移動などが詳細に分かるものである。つまり、1950年に時点で川崎市の大工場で働く50名が、どのような経路をへて川崎市に流入してきたのかがよくわかるものである。それによれば、この段階の工場労働者は、仕送りや就職のきっかけなど、さまざまな面で生家(農家が多い)や出身地(農村が多い)とのつながりを残している者が存外に多かった。戦時期の急激な労働力需要は、農村から都市への労働力移動を強く促したが、敗戦後5年をへた段階にあっても労働者のあり方には依然として農村とのつながりが強いのであり、そこにこの時期の都市と農村の関係がよく表現されているといえる。今のところ、戦時から戦後にかけての地域杜会の変化は巨大なものがあったが、それは戦時動員と戦後改革の二重の衝撃によってあらわれたものであり、二重の衝撃の歴史的意味を過不足なく評価することが肝要であること、その点の分析を農村と都市の双方にわたって進め、本研究のまとめをはたしたいと考えている。
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