1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10630084
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板谷 淳一 北海道大学, 経済学部, 教授 (20168305)
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Keywords | 財政再建 / フラー・ライダー / 徴分ゲーム / 利益団体 / オープン・ループ / クローズ・ループ |
Research Abstract |
本年度は財政再建の次のような理論モデルを構築した。各利益団体には財政再建に協力して、自らの既得権益を減らすことに同意するとから、次のような利益が得られると考えられる。第一に、財政再建の結果生まれた財政余剰は一般的な公共財への支出や社会保障支出に回されるので、国民全体が便益を受ける。第2に、財政再建を遅らせることは、国民経済の停滞あるいは混乱を招くので、既得権益の存続自体が難しくなる。第3に、財政再建に協力しないと、国民の反感を招き、最終的には急進的な財政再建を招くことになる。それらを事前に避けるためには、利益団体には財政再建へ自発的に協力することのインセンティブが存在する。しかし、各利益団体にとって財政再建に協力することは、既得権益をあきらめることによる経済的損失を意味する。さらに、先に他の利益団体が財政再建に協力すれば、その利益団体が既得権益をあきらめることなく、財政再建の便益を享受できる。その結果、各利益団体には財政再建への協力をなるべく先延ばしをしようとするインセンティブも働く。したがって、各利益団体にとって、どれだけ財政再建に協力するかに加えて、財政再建にいつ協力するかというタイミングの決定が重要になる。そこで、我々は各利益団体の行動を微分ゲームを用いて定式化した。微分ゲームの手法によって、各利益団体のそのような戦略的な相互作用を分析できる。各利益団体の戦略集合としてオープン・ループ戦略とクローズ・ループ戦略を考えた。前者の戦略をとる場合、利益団体は財政再建計画の最初に決めた財政再建計画を変更することができない。これは、財政再建のための厳しい法律などが制定された状況に相当する。後者の戦略をとる場合、利益団体は財政再建計画を、財政再建の進捗状況を見ながら見直すことができる。
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