1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10630084
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板谷 淳一 北海道大学, 経済学部, 教授 (20168305)
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Keywords | 財政再建 / 動学ゲーム / ナッシュ均衡 / 公共財 / 利益団体 |
Research Abstract |
今年度も理論モデルの構築とその検討を行った。今年度は、さらに次のような結果を得た。 (1)各利益団体の戦略集合としてクローズ・ループ戦略を採用するとき、オープン・ループ戦略にくらべて、財政再建の状況は悪化することは前年度に報告したが、今年度の研究では、各利益団体は、線形マルコフ戦略だけではなく、非線形マルコフ戦略も利用可能な場合を考えた。この場合、国債の残高に上限が存在するとき、最適なマルコフ戦略が多数現われる。この非一意な最適マルコフ戦略の中から、よりベターな戦略を選び出すためには、財政再建計画が開始される前に利益団体者間の話し合いが必要である。しかしながら、たとえそのような事前の話し合い結果、たとえ最善の財政再建プランが選ばれても、その長期的な結果はパレート最適な財政再建プランほど望ましいものでないことがわかった。 (2)消費税による財政再建プランは、その税収によって財政再建を行うことに加えて(消費税による所得効果)、消費税率の増加が既得権益を消費することの機会費用を増加させて(消費税による価格効果)、既得権益の消費が利益団体にとって魅力のないものとなり、財政再建に対してより協力的になることがわかった。 (3)所得税の増税は、利益団体の財政再建の自発的な協力を抑制することになり、財政再建を遅らせる可能性があることがわかった。 以上の結果は、2つの論文『Fiscal reconstruction, Taxation and the Size of Government』および『A Dynamic Model of Fiscal Reconstruction』にまとめて、現在、前者をEconomics and Politecsへ、後者をEuropean Journal of Political Economyに投稿中である。
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