2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10630084
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
板谷 淳一 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20168305)
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Keywords | 財政再建 / 動学ゲーム / ナッシュ均衡 / 公共財 / 利益団体 |
Research Abstract |
今年度は理論的な成果を"A Dynamic Model of Fiscal Reconstruction"という論文にして、European Journal of Political Economyに投稿したところ、上記の学術雑誌より、掲載を受諾する旨の手紙を編集者より受け取った。2001年の秋に出版される号に掲載されることが決まった。さらに、"Fiscal Reconstruction,Taxation and the Size of Government"のというもう一つの論文をつくり、Economic and Politicsという雑誌に投稿したとこところ、こちらの雑誌からは掲載不可の結果を知らされた。現在、他の投稿先を検討中である。 今年度、2つの論文にまとめる際に最も集中的に研究を行ったのは、論文で得られた理論的成果からどのような政策的なインプリケーションを引き出すかという点であった。その点に関して次のような結果を得た。 (1)財政再建を行う時、一度決まった財政再建のプランを後で変更することを許すような柔軟な財政再建プランは一般にうまくいかず、国債の高水準な累積残高をもたらす。 (2)したがって、財政再建を成功させるためには、後での変更を認めないような修正の手続きがきわめて厳しい法律を制定したり、きわめてつよい権限を財政当局に長期間保持させるような予算制定制度をデザインする必要がある。 (3)消費税増加によって歳入の増加をはかることには次のようなメリットがあることがわかった。歳入を増加により財政再建に貢献するだけでなく、利益団体が既得権益から得られる便益の機会費用を増加させる効果がある。その結果、消費税率の増加は、利益団体を財政再建に対してより協力的にさせ、自らの既得権益をあきらめさせることを促進する効果がある。その結果、財政再建の速度が増加するばかりでなく、国債の累積残高も低水準へと導く。 (4)国債の利子率の増加は財政再建ための財政的負担を増加させるけれども、利益団体が既得権益を長期間保持することの機会費用を増加させる効果がある。その結果、このような機会費用の増加は利益団体を財政再建にたいしてより協力的な方向へと導く。すなわち、利益団体はよりはやい段階で彼らの既得権益を手放すようになる。 (5)本年度は、利益団体の行動と財政再建の成功の水準を計量的に推定しようと様々な計量的なモデルを構築したが、残念ながら、上で示されたような理論的成果を確認するような計量的な結果は得られなかった。特に問題な点は、利益団体の既得権益を保持する行動の強さをあらわすためには、どのような変数(すなわち、代理変数)が最も適切であるかという問題に直面した。この問題は今後の研究課題としたい。
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[Publications] Ihori, T, and Itaya, J.: "A Dynamic Model of Fiscal Reconstruction"European Journal of Political Economy. 17巻4号. (2001)