2000 Fiscal Year Annual Research Report
市場の不完備性と資産価格決定に対する証券会社の役割
Project/Area Number |
10630089
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷川 寧彦 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (60163622)
|
Keywords | 不完備市場 / 資産価格理論 / 証券発行市場 / 証券流通市場 / マイクロストラクチャー |
Research Abstract |
市場集中義務が撤廃され,取引所立会時間外の取引(立会い外)および証券会社や機関投資家が取引所を利用しないで行う取引(取引所外取引)が盛んに利用されるようになった。こうした制度改定により市場参加者は取引する「場」(提供される取引機会)の選択が可能になり,場の提供をめぐった競争が活発になったと広く認識されるようになった。このことに関する経済的含意を,「市場間取引とその経済厚生について」として公表した。 聞き取り調査を重ねたところ,立会い外や市場外取引でもっとも典型的な形態は,機関投資家が複数銘柄からなる「バスケット」の一括売買を証券会社相手に行うものであり,売買の相手方となった証券会社は,やがては「取引所」でそのポジションを調整し,立会い外ないし市場外取引によって引き起こされたポジションをもつリスクをいかに避けるかが,重要なテーマであることがわかった。取引所は「一括した」売買注文の機会を提供していないので,投資家がバスケット売買を自ら取引所で行おうとする場合,バスケットを構成する銘柄ごとに個別の注文を出す必要がある。個々の注文が約定(成立)するのかは,こうした個別注文を行う際に重要な関心事である。そこでティックデータ(約定データ)をもとに「指値注文の執行確率」の推定を試み,ディスカッションペーパーとして公表した。 転換社債は株式を原証券とみなすことができるが,裁定ポジションに株式のショート(空売り)を含むとき,転換社債価格を求めるのに,いわゆるオプション価格理論の基礎となっている裁定価格理論はそのまま適用することができない。株式制度貸借制度には,ショートポジションが追証という,別のオプションを内在しているためである。この点に注意した転換社債の価格付けについて実証分析を行い,公表に向けて結果を取りまとめ中である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 谷川寧彦: "市場間競争とその経済厚生について"『インベストメント』. 53・2. 16-38 (2000)
-
[Publications] 宇野淳,大村敬一,谷川寧彦: "指値注文の執行確率"Discussion Papers in Economics and Business,Osaka University. 00・05. 32 (2000)
-
[Publications] 筒井義郎(編): "金融分析の最先端"東洋経済新報社. 347 (2000)