1998 Fiscal Year Annual Research Report
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10630092
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
横内 正雄 法政大学, 経営学部, 教授 (20166870)
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Keywords | カレンシーボード制 / 香港ドル / アジア通貨危機 / 香港金融管理局 / 国際金融センター / 香港特別行政区基本法 / ドルリンク制 / 固定相場制度 |
Research Abstract |
本年度の研究は、香港の為替相場制度であるカレンシーボード制について、理論的に見たメリットとでデメリットについて検討を加えた。1997年のアジア通貨危機以来香港ドルはしばしば投機攻撃にさらされ、香港金融管理局は外国為替市場にたいする大幅な介入によって香港ドルの安定を維持した。そうした状況の中で、1983年以来採用されてきた通貨発行に100%の米ドル準備が要求されるドルリンク制(カレンシーボード制)の維持に関して論争が生じ、さらに世界的に見てもカレンシーボード制への関心が高まって来ている。 カレンシーボード制を採用することは、(1)為替相場が固定されるために経済実体の側では対外的なショックに柔軟に対応できる、(2)変動相場制の場合、香港のような国際金融センターでは為替リスク等の要因から不安定性が高まり有利ではない、(3)カレンシーボード制の場合、銀行システムに厳格な網を掛けることが出来るので金融監督当局は、銀行システムを健全に保つことが容易とある、等のメリットを持つとされている。 他方、カレンシーボード制のデメリットとしては、(1)通貨の信認が揺らいだ場合、通貨の投機攻撃にさらされやすく、それに伴って制度を変更したときのショックも大きい、(2)為替相場が固定されるため、変動相場制を採用した場合の為替相場が通貨の安定性のバロメーターにはならない、(3)長期的に見て対外均衡が優先され国内均衡が犠牲にされるため、国内経済実体に不利な影響が及びやすい、等が指摘されている。 中国政府は、香港特別行政区基本法において香港ドルの独立性と安定性を維持することを確約している。そのため、香港のカレンシーボード制は当面は維持されると見られる。しかし、アジア通貨危機が下火になっているが、香港ドルへの投機が生じやすい状況は続いており、香港金融管理局は難しい舵取りが要求されている。
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Research Products
(1 results)