1999 Fiscal Year Annual Research Report
多国籍企業の投資と法人税システムのあり方に関する研究
Project/Area Number |
10630093
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馬場 義久 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (80148022)
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Keywords | 包括的事業税法 / 二元的所得税 / 外国投資 / 資本コスト / 配当課税 / 多国籍企業 |
Research Abstract |
1.現行日本の法人税制-個人所得税制システムの問題点を明確にし、論文および著書として発表した。(1)そこでは、企業が発行する金融資産の生み出す所得に対する課税の方法として、包括的事業所得税法の採用を主張した。本研究が重視している資本輸出の中立性という開放経済下の基準をも視野に入れてのものである。(2)わが国が先進5カ国の中で最も利子に比べて配当を重課していることを指摘し、法人税制改革は課税ベース別の負担格差をも考慮すべきことを主張した。 2.90年代初頭に北欧三国で導入されたDual Income Tax(二次的所得税)をとりあげ、その各資本所得に対して均一かつ一定の税率で課税するという分離課税システムの長所を明確にした。この作業は本研究が重視する統合方式、すなわち包括的事業所得税法を所得税体系上正当化する意味を持つ。 3.資本輸出国が外国投資と国内投資とで課税上の差別を行っている状況と、海外子会社が移転価格制度を援用して親会社に利潤移転を行なっている状況を同時に想定して、親会社・子会社の資本コストの資本コストを導出し、それらと国内および進出先の法人税システムとの関連を分析し、(1)外国利潤留保を源泉とするケースでも国内の配当課税システムが親会社の資本コストに影響を与え、(2)恒常状態下の子会社の海外投資に対しても、母国の配当課税システムが子会社の資本コストに影響を与える、との知見を得た。以上の点はいわゆるNew Viewや多国籍企業の発展段階を扱ったSinnらの結論と異なるものである。現在、上記の知見の意義を日米の税制と包括的事業所得税法に則して明確にしようと試みている。今後、それらを本格的な実証分析に活用したい。
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