1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本多国籍企業のグローバル統合メカニズムに関する研究
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10630106
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
板垣 博 埼玉大学, 経済学部, 教授 (20125884)
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Keywords | 多国籍企業 / 国際経営 / グローバル統合メカニズム |
Research Abstract |
本研究は、日本企業の国際的事業展開を支える統括組織の構造と機能について、主にインタビュー調査を通じて、国際化の初期段階から現在に至る変化のプロセス、現状、今後の課題を考察することを目的とする。今年度は、海外経営の歴史の長さ、海外子会社の数、関連する事業部や製品の種類、展開する地域の多様性と、いずれの指標においても日本の多国籍企業の代表的存在といえる松下電器産業(株)を主たる対象としてインテンシヴに調査を行ってきた。まず、本社の経営企画室と東京本社の国際部におけるインタビューを通じて、松下電器産業の海外事業展開の歴史的推移、海外事業を統括する部署の変化とその要因、などに関する調査を行った。ついで、国際企画部や各事業部におけるインタビューを通じて、投資、製品や市場の選択、人事などを決定する際の権限が、本社、事業部、地域統轄本部、海外子会社の間でどのように分担されているのか、そうした決定を行う際にどのような形でフォーマル・インフォーマルな情報の交換が行われているのか、といった点に関する調査を行った。これまでの調査で明らかになった要点は、まず第1に、同社の海外事業は、本社の統一的な戦略に基づいて展開されたのではなく各事業部がその時々の情勢に応じていわばアドホックに展開してきたこと、第2に、したがって海外子会社の統括メカニズムも本社が積極的に関わるというよりは各事業部の強い権限のもとで機能していること、第3に、しかしいまや各地域での事業部を越えた調整が不可欠となり、本社の海外企画室が中心になって、本社サイド、事業部、地域統轄本部、海外現地法人の間の権限分担関係の公式化がすすんでいること、などである。
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