Research Abstract |
A型岩堀Hecke代数H_n(q)は各q∈Cに対して定義されているn!次元C-代数である。q=1のときH_n(1)はn次対称群S_nの群環CS_nとなる。qが0でないか1の巾根でないとき(このようなqをgeneric元とよぶ)、H_n(q)はCS_nと同型なC-代数である。qがgenericでないときは一般にはH_n(q)の表現論はCS_nのそれとは全く違ったものになる。H_n(q)の表現論は数理物理や低次元トポロジー等への応用があり、そのためにもH_n(q)の既約表現の指標(以下、既約指標と呼ぶ)を計算することが重要である。CS_nの既約指標を得る方法として、中山-Murnaghan公式が知られている。qがgenericのとき、H_n(q)の既約指標に対する中山-MUrnaghan型公式はRamによって得られている。 この研究では、qが1の原始l乗根^1√<1>のときにWenzlが構成したH_n(^1√<1>)の既約表現の中で深さが3のものに対する中山-Murnaghan型公式の構成を試みた。そして一部の結果を得た箱の数がnで深さがkまででなおかつ1行目の箱の数とk行目の箱の数の差がl-k以下のYoung図形の集合をΛ^<(k,l)>_nとする。Wenzlは各λ∈Λ^<(k,l)>_nに対してH_n(^1√<1>)の互いに同値でない既約表現π^<(k,l)>_λを構成した。π^<(k,l)>_λの既約指標をχ^<(k,l)>_λとする。e^<(k,l)>_λをπ^<(k,l)>_λに対応するH_n(^1√<1>)の原始ペキ等元とする。W∈H_m(^1√<1>),X∈H_<n-m>(^1√<1>)に対して対応するH_m(^1√<1>)×H_<n-m>(^1√<1>)⊂H_n(^1√<1>)の元をW×Xで表す。λ∈Λ^<(k,l)>_n,μ∈Λ^<(k,l)>_m,ν∈Λ^<(k,l)>_<n-m>に対してd^λ_<μν>=χ^<(k,l)>_λ(e^<(k,l)>_μ×e^<(k,l)>_ν)をfusion ruleとよぶ。2つのYoung図形μ∈Λ^<(k,l)>_m,λ∈Λ^<(k,l)>_n(m【less than or equal】n)に対してこれらを左上角が重なるようにおいたときμがλをはみ出さないときμCλと表わし、写像χ^<(k,l)>_<λ/μ>:H_<n-m>(^1√<1>)→Cをχ^<(k,l)>_<λ/μ>(X)=χ^<(k,l)>_μ(e^<(k,l)>_λ×X)(X∈H_<n-m>(^1√<1>))で定義する。このときχ^<(k,l)>_<λ/μ>(X)=Σ_<ν∈Λ^<(k,l)>_<n-m>>d^λ_<μν>χ^<(3,l)>_ν(X)(X∈H_<n-m>(^1√<1>))が成り立つ。1【less than or equal】i<j【less than or equal】nに対してT_<i,j>=T_iT_<i+1>・・・T_<j-1>とおく。このときk=3のときのλ∈Λ^<(3,l)>_nに対するχ^<(3,l)>_λ(T_<1,n>)の値を求めた。その結果任意のλ∈Λ^<(3,l)>_nに対してχ^<(3、l)>_<λ+(l,l,l)>(T_<l,n+3l>)=χ^<(3,l)>_λ(T_<1,n>)となっていることがわかった。ここでλ+(l,l,l)はλの各行にl個の箱を付け加えたものである。χ^<(3.l)>_<λ/μ>(T_<1,n-m>)もわかれば中山-Murnaghan型公式を構成できるが、それについては一部のd^λ_<μν>を求めた。
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