Research Abstract |
集団の大きさ(個体数)が離散時間確率過程{N(t,ω_1)}_<t=0,±1,±2,...>である半数体Wright-Fisherモデルを考える。2つのタイプA_1とA_2が集団に存在するとし、時刻tにおけるA_1,の相対頻度をx(t,ω_1,ω_2)とする。確率過程{x(t,ω_1,ω_2)}_<t【greater than or equal】0>を個体数の確率変動を伴うWight-Fisherモデルという。 確率過程{x(t,ω_1,ω_2)}_<t【greater than or equal】0>が集団の大きさを大きくしたとき、集団の大きさに依存する適切な時間尺度の変更の下で、連続時間確率過程、とくに、拡散過程に収束するかが、理論集団遺伝学における重要な問題の一つである。時間尺度の変更の候補としては、tを集団の有効個体数Neで割ったt/(Ne)が考えられるが、まず、Neが{N(t,ω_1)}_<t=0±1±2,...>の確率法則、とくに、自相関の強さにどのように依存するかを明らかにする必要がある。そのために、以下のような簡単な2状態マルコフ連鎖を考え、有効個体数Neの性質を明らかにした。 {N(t,ω_1)}_<t=0,±1,±2,...>を{N_1,N_2}上のマルコフ連鎖で、P(N(t+1,ω_1)≠N(t,ω_1)|N(t,ω_1)=N_i)=q_iとする(i=1,2)。このとき、有効個体数Ne(q_1,q_2)を定義し、その具体的な表現を求めることができる。この表現を用いて、次の結果を得ることができた。N(t,ω_1)の調和平均をN_H(q_1,q_2)とすると、0<q_1+q_2<1のときNe(q_1,q_2)<N_H(q_1,q_2)、q_1+q_2=1のときNe(q_1,q_2)=N_H(q_1,q_2)、q_1+q_2>1のときNe(q_1,q_2)>N_H(q_1,q_2)である。さらに、Ne(q_1,q_2)のq_1,q_2依存性や、集団の大きさが非常に大きくなったときの漸近的性質などについても明らかにした。
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