1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640265
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
静谷 謙一 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (50154216)
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Keywords | ゲージ理論 / 量子ホール効果 / 量子ホール効果の消失 / 局在 / 端電流 / 対称性 |
Research Abstract |
保存則と密接に結びついた対称性とゲージ原理は現代の素粒子物理の基幹をなす概念であるが、超伝導のような量子力学的輸送現象も本来力学系の対称性との関わりが深く、その記述にゲージ理論が有効に適用できる場合が少なくない。実際、素粒子物理において考察されたスキルミオンのようなトポロジカルな励起が現実に2次元ホール電子系で観測されていることに見るように、低次元電子系はゲージ理論の実用の場として様相を呈している。このような現状を踏まえながら、平成10年度には主として量子ホール効果の根幹に関わる諸問題をゲージ理論の考え方と手法を用いて研究した。その内容は以下の通りである。 1.ホール電流が試料の内部を流れるのかそれとも試料端に限るのか理論的に特定することは、量子ホール効果の基盤に関わる重要な課題である。これに関して、局在が原因となってホール電流のかなりの部分が系の端を流れるようになるという考えを以前に提唱した。今回、計算機を用いた数値実験を比較的大きい試料(電子数300程度)について行ない、この端ホール電流の描像を検証した。そして、その結果を論文として発表した。 2.上記の数値実験を通して、ホール電場は試料中の電子の局在を解くように作用するという事実から「量子ホール効果の消失」に関する実験結果が説明できることに気づいた。そこで、(電子数500以上の)比較的大きい試料について数値実験を実施し、より細部にわたる検討と微視的な機構の解明を試みた。(その際、本年度に備品として購入したパーソナルコンピュータが役立った。)その結果は間もなく論文として発表する。
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