1999 Fiscal Year Annual Research Report
不安定核^<16>N_<g.s.>の電磁気モーメントの測定
Project/Area Number |
10640270
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
出水 秀明 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50294153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 俊 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60294146)
下田 正 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70135656)
高橋 憲明 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10028152)
旭 耕一郎 東京工業大学, 理学部・物理学科, 教授 (80114354)
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Keywords | スノーボール / 不安定核 / 磁気モーメント / スピン偏極 / 偏極保持 / 液体ヘリウム / イオントラップ / 超流動 |
Research Abstract |
核磁気モーメントは核構造の良いプローブであり、近年注目されている不安定領域の核の核構造解明のために有効である。 ところが、窒素16などの秒以上の寿命を持つ不安定核の核磁気モーメントの測定には、スピン偏極の保持に困難が伴うため、核を捕獲するストッパー物質の性質が実験上、極めて重要になる。我々は、このストッパー物質として超流動ヘリウムに着目し、その開発実験を行い新たな知見を得た。 イオンを液体ヘリウム中に入射すると、次第に電子を捕獲しながら荷電状態が中性化していくが、完全には中性化せず、イオンの状態で静止するものが存在する。液体ヘリウム中のイオンは周囲にヘリウム原子をまとった、対称性の良いスノーボール構造を形成すると期待され、ある種の核では偏極保持のためのストッパー物質として有望視できる。 一方、超流動ヘリウムは熱拡散速度が速いため、中性化した原子に及ぼす電磁場も平均化されることが期待され、核種によってはこちらもストッパー物質として有望視できる。 イオンの状態の原子と中性化した原子とは、電場によりイオンのみをドリフトさせることで位置的に分離が可能であり、スピン緩和時間などの性質を各々別々に測定できる。 液体ヘリウムをストッパーとして用いるためには液体ヘリウム中のイオンの挙動を十分把握する必要がある。この、液体ヘリウム中のイオンの挙動を、不純物イオンが放射するベータ線からイオンの崩壊位置を求めることで観測することにし、阪大核物理研究センターで実験を行った。 本研究では液体ヘリウム中の不安定核からのベータ線をホドスコープにより検出することで、電場により不安定核イオンが動いている様子を直接的に測定することに初めて成功した。また電場により動かない中性化した成分を同時に捕らえることに成功し、核種によりイオンとスノーボールの生成比が異なることなどの新たな知見を得ることができた。 またこのことから、不安定核の磁気モーメント測定のみならず、量子液体の諸性質を放射性不純物の動きを通じて直接的に観測するという新しい測定方法を確立したことになり、物性的側面からもあたらしい実験手段として期待できる。
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