2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640281
|
Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
緑川 章一 青森大学, 工学部, 助教授 (00265133)
|
Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 大気ニュートリノ / ニュートリノ質量 |
Research Abstract |
ニュートリノ振動に関する最初の証拠は、大気ニュートリノの天頂角分布において見出された。ニュートリノのエネルギーが高いと、ニュートリノを生成する一次宇宙線のエネルギーも高くなるために地磁気の影響を受けなくなる。その結果、振動が起こらない場合にニュートリノフラックスは天頂角分布に関して対称的になる筈である。ところが、観測結果は、上向きニュートリノの数が予想値を下回っていた。これは、ニュートリノ振動の証拠とみなすことができる。しかし、データからニュートリノの質量と混合角を決定するためには、ニュートリノ振動が無いとした場合のフラックスについて正確に知る必要がある。 我々は、以前より大気ニュートリノフラックスの計算の精密化に努めてきた。従来の計算方法は、ニュートリノの飛来方向は一次宇宙線の方向と同じであるという1次元近似に基づいていた。しかし、コンピュータの性能向上により、フラックスの3次元計算が直接行なえるようになった。このような計算は、最初、イタリアとロシアのグループにより独立に行なわれたが、両者の結果は異なっていた。 そもそも、ニュートリノフラックスの3次元計算は研究テーマの一つであったので、我々も3次元計算を行い、どちらの主張が正しいか調べてみることにした。その結果、3次元計算では、1次元計算よりも水平方向のニュートリノフラックスが多いことが分かった。これは、大気の層に厚みがあるために水平方向進入する一次宇宙線は他の角度からのものに較べてより厚い大気の層を通過するからである。そのため、2次粒子のパイオンやミューオンがより多く作られる。結果として、最終生成物であるニュートリノも増加する。しかし、これはエネルギーの比較的低いニュートリノについて言えることで、エネルギーが高くなると1次元計算も3次元計算も同じ結果になる。さらに、観測はニュートリノが弾いた電子を観測するので、ニュートリノと電子の衝突でニュートリノの方向についての情報もある程度失われてしまう。その結果、最終的な結果については、従来の結果と大きく異ならないことが分かった。
|