1998 Fiscal Year Annual Research Report
弦理論のフェルミオンによる非摂動的定式化とブラックホールの研究
Project/Area Number |
10640286
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
矢彦澤 茂明 立教大学, 理学部, 助教授 (00192790)
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Keywords | 弦理論 / 非摂動的定式化 / D-brane / D-Instanton / 非臨界弦 / String field / 組み合わせ論 / string equation |
Research Abstract |
重力等の基本的な四つの力と電子等の物質を量子論と矛盾なく統一的に記述する理論としては現在弦理論が最も有望である。しかし,この理論の全体を理解し,さらに現実の現象を説明できるようにするためには非摂動的な理解が必要となってくる。 近年における弦理論の非摂動的理解の進展の中で重要なことの一つはD-braneの理論が登場したことであり,これに伴って"弦的な効果"と呼ばれるe^<-c/g>(gは閉弦の結合定数)という非摂動論的効果の起源がはっきりしてきた。ボソン的弦の場合はこのe^<-c/g>という効果を通常の準古典近似から出すことはできず,世界面の境界の凝縮の効果を境界の組み合わせ論を用いて考察することによって説明することができる。ここで,D-braneの組み合わせ論的考察や相互作用を組織的に扱うには量子化された弦場を用いれば便利であることが予想される。現時点では臨界次元(d=26)で弦場を使ってD-braneを扱うのは難しいが,c<1の非臨界弦では可能である。実際,福間と矢彦沢はその場合の弦場のオペレータ形式(以下「FY形式」と呼ぶ。)を構成しており,それはボソンスカラー場を用いても良いし,フェルミオン場を用いても定式化できるものであった。 この研究において示したことは,時空座標と"境界上の宇宙項"ζが同一視できることに着目すれば,このFY形式を用いて,D-Instantonと意味付けできる状態及びそれを生成するオペレータを構成することができるということである。さらに,このD-Instantonは予想される境界の組み合わせ論を満たしていることもわかる。このことによって,FY形式を用いれば,弦場を用いてどのようにD-Instantonを構成すればよいかを理解することができる。そして,おそらく,このような理解は弦やD-braneやその他のソリトンを含めた理論全体の枠組みを考える上で一つの示唆を与えるものと思われる。 この研究は"Comments on D-Inatantons in c<1 Strings"(by M.Fukuma and S.Yahikozawa)としてプレプリントで公表し,現在Physics Letters Bに投稿中である。
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