1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢野 英雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70231652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 信雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90142687)
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Keywords | 強相関フェルミ液体 / 1次元フェルミ粒子系 / 朝永-ラッティンジャー液体 / 低次元量子凝縮系 |
Research Abstract |
本科学研究費補助金による研究は2年度にわたって行われる。本年度は初年度で、1次元メゾポーラス中の^3Heを研究する上での比熱装置の開発および予備実験を行った。メゾポーラス物質として孔径18Å長さ5000〜10000Åの1次元トンネルを形成する多孔質物質FSM-16と孔径20ÅのTWlを用いた。メゾポーラス中の^3Heと比熱セルとの熱接触を良くするために、これらの多孔質を銀プレートに圧着する方法を開発した。また、1mKまでの温度測定装置、冷却装置を制作した。これらの装置を使って、^3Heの吸着量を系統的に変えながら比熱測定を行った。 FSM-16を用いた測定では、吸着量に対する比熱のl00mKでの等温曲線は1層付近で折れ曲がりを示した。この吸着量以下では、比熱は小さく、その温度変化は100mK以下で温度が下がるにつれて上昇する。それに対しこの吸着量以上では、比熱は大きく、吸着量に比例して比熱が増大し、その温度変化は100mK以下で温度が下がるにつれて減少した。これらの結果は、1層までの^3Heが固相を形成し、それ以上の層では液相を形成することを示している。1層の固相の比熱を引いた液層だけの比熱は、温度に比例した。この結果は、液層がフェルミ液体もしくは朝永-ラッティンジャー液体であることを示している。 FSM-16の孔径が18Åであり、^3He固層の厚さが約3Åであることを考えると、液層は12Åのトンネル壁面に形成される。この壁面上の^3Heの周方向の第一励起状態のエネルギーは温度換算で300mKと計算される。このことは100mK以下では周方向にはノードを持たない波動関数が広がり、1次元フェルミ粒子系が実現していることを示唆している。このことを考えあわせれば、比熱が温度に比例する結果は、朝永-ラッティンジャー液体の性質の現れだと考えられる。
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