1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 一 東京大学, 物性研究所, 教授 (40091475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤堂 眞治 東京大学, 物性研究所, 助手 (10291337)
福島 孝治 東京大学, 物性研究所, 助手 (80282606)
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Keywords | スピングラス / エイジング現象 / 平均場描像 / 液滴描像 / ドメイン壁 / ドメイン成長 |
Research Abstract |
スピングラス(SG)秩序相の実体をめぐって二つの考え方ー平均場描像と液滴描像ーの間の論争が現在なお続いている。本研究ではSG相解明に対する有力な手掛かりと期待されているエイジング現象について、3次元ガウシャンイジングEA模型を中心にしてモンテカルロ法による数値解析を行い、「(準平衡)ドメインが熱活性過程によって成長するという液滴理論の基本的枠組で、シミュレートされたエイジング現象を説明できる」との結論に導く、以下の結果が得られた。 i) 高温常磁性相からSG相のある温度Tに系を急冷し(時刻t=0とする)、この温度での平衡化(エイジング)過程を追う。時刻tでの平均ドメインサイズをR(t)、1スピンあたりのエネルギーの熱平衡値からのずれをδe_T(t)とすると、後者はδe_T(t)〓R(t)^<θ-D>のようにスケールされる。ここでdは系の空間次元、指数θの値は液滴理論で導入されたT=0でのdeffect energyのサイズ依存性を規定する指数に一致した。 ii) R(t)の成長は、同程度のサイズのドメイン(液滴)が熱活性化によって(ドメイン壁エネルギーを減少する方向に)反転することで実現される。この熱活性化過程を直接的に検証した。その障壁自由エネルギーB_Lは液滴サイズLに対してB_L〜lnLで与えられる。この結果はレプリカ重なり関数の相関長として求めたドメインサイズR(t)の成長則、R(t)〜t^<1/z(T)>、と符合する。 iii) 温度シフト(急冷後ある時刻tで温度を変える)や温度サイクリング(温度シフト後ある時刻でもとの温度Tに戻す)のエイジング過程で見られる現象も、温度変化直後の短い時間領域を除いて、上述のR(t)の成長則によって統一的に説明される。 以上の成果は小森達雄の学位論文としてまとめられ、現在、投稿論文を執筆中である。
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