1998 Fiscal Year Annual Research Report
誘導ラマン散乱を用いたフェムト秒ラマン分光法の開発
Project/Area Number |
10640378
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉澤 雅幸 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (60183993)
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Keywords | フェムト秒分光 / ラマン分光 / 時間分解ラマン分光 / 誘導ラマン散乱 / 光異性化 / DCM色素 / ラマン増幅 / フーリエ変換限界 |
Research Abstract |
光異性化や光相転移などの光誘起現象の研究では、初期過程における物質の構造変化を調べることが非常に重要である。この目的のために新しい原理のフェムト秒時間分解ラマン分光装置を開発した。その特徴は、光励起後の観測に狭帯域のラマン励起光とフェムト秒白色光パルスによる誘導ラマン散乱を用いることである。この方法のスペクトル分解能と時間分解能は、それぞれラマン励起光とフェムト秒白色光という異なる光パルスで決まることを理論的に示した。これは、従来の方法において分解能の限界となっている単一パルスのフーリエ変換限界が、この方法では制約とならないことを示している。 実験装置は、フェムト秒吸収分光装置にラマン励起光を付け加えることで実現した。具体的には、再生増幅されたフェムト秒チタンサファイアレーザーを光源として、その第二高調波(400nm)を第1の励起光に、干渉フィルターを用いて狭帯域化した基本波(800nm)をラマン励起光とし、自己位相変調により発生したフェムト秒白色光をプローブ光とした。信号はラマン増幅あるいはラマン損失によるプローブ光の透過率変化として観測した。この装置を用いることで、250フェムト秒の時間分解能と25cm^<-1>のスペクトル分解能によりラマン分光を行うことができた。これは単一光パルスのフーリエ変換限界を超えるもので、本研究の新しい方法により初めて実現されたものである。 応用として、トランス-シス光異性化を起こす色素分子であるDCMを本装置で実際に測定した。光励起により生じたシスDCMからの新しいラマン信号をフェムト秒の時間分解能で観測することに成功した。
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