1998 Fiscal Year Annual Research Report
フォトクロミックカンチレバーによる蛋白質の疎水・親水・荷電領域の可視化
Project/Area Number |
10640384
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藤 敏夫 金沢大学, 理学部, 教授 (50184320)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / フォトクロミック色素 / 蛋白質表面物性 / カンチレバー / 可視化 |
Research Abstract |
タンパク質表面の特徴的な疎水・親水・荷電領域分布はタンパク質の機能発現に重要である。これらの情報はこれまでタンパク質の3次構造が解明されなければ知ることができなかった。また、機能中のタンパク質でこれらの領域の変化を知ることは極めて困難であった。原子間力顕微鏡はタンパク質の形状ばかりでなく、上記の情報を引き出す可能性を持っている。性質の既知な探針と試料との間に働く力の分布から、試料の物性を判断することが可能であることが、物性が既知の試料で示されてきた。しかしながら、物性が未知の試料で示されたことはなく、またタンパク質で示されたことはこれまで皆無である。困難の理由は、ひとつの性質をもつ探針で測定された力だけから試料表面の物性を判断することができないからである。同一の試料に対し異なる性質をもつ探針で異なる力の分布が得られれば、物性を特定することが可能である。しかし、カンチレバーを交換することで、同一の試料を観察することが困難になる。そこで、光照射で性質が変化するフォトクロミック色素を探針に導入することを考案した。これにより、光照射前後で同一の試料をスキャンすることが可能になる。初年度は、フォトクロミック色素を探針に導入する方法、光照射前後で探針の性質が実際に変化するのか、力分布を計測するための走査方法などを検討した。まず、紫外線照射で疎水性から親水性(プラス電荷)に変化するマラカイトグリーンを探針に導入するために、マラカイトグリーンのビニル誘導体を合成した。探針をアクリロイルシランコートしこれにマラカイトグリーンビニルを共有結合させる。この方法で探針先端だけを修飾できることを電子顕微鏡で確認した。疎水性基板あるいはマイナス電荷をもつ基板と、この修飾探針をもつカンチレバーとの間に働く力が紫外線照射で変化するかを測定した。その結果、紫外線照射で探針が疎水・親水性変換することを確認できた。試験試料として未洗浄のカバーガラスを用い、その表面物性マップを得ることに成功した。この方法をタンパク質に適用するには、未だいくつかの問題点が残されているが、来年度はこれらを解決し、タンパク質の表面物性の観察に挑戦したい。
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