1998 Fiscal Year Annual Research Report
中速及び高速領域の陽子に対する各種金属元素の阻止能
Project/Area Number |
10640386
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
坂本 直樹 奈良女子大学, 理学部・物理科学科, 教授 (20031718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 英巳 奈良女子大学, 理学部・物理科学科, 助教授 (90169194)
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Keywords | 阻止能 / 中速、高速領域 / 金属元素 / 平均励起エネルギー / Bethe-Bloch阻止能公式 / 多重散乱 |
Research Abstract |
高速領域においては軽イオンに対する高精度の阻止能の実験値が存在し、理論的記述も十分な精度で実験値を再現出来ることは良く知られている。一方、中速領域では実験的、理論的研究ともに十分とは言えないが、理論的取り扱いの困難さのため実験的研究の重要性がそれだけ大きい。我々が今年度行った測定は3-13.5MeV陽子に対するTi及びFeの阻止能測定及び0.2または0.3-3.4MeV陽子に対するTi及びCuの阻止能測定である。3MeV以上の高エネルギー領域の測定には京都大学の大型加速器が用いられたので、マシンタイムの時間的制約からも2ターゲットの測定が限度であった。十分高いエネルギー領域における阻止能データからは元素の平均励起エネルギーの精密な値を得ることが出来る。高速領域から中速領域に亘る一連の測定からは、高速領域で阻止能を良く記述するBethe-Blochの阻止能公式がどれだけ低いエネルギーまで適用出来るかに関する情報が得られる。この様な研究の成果は物理学会及び日露シンポジウムにおいて発表された。低エネルギー側の測定においては、特に最低エネルギー近傍の測定値に対してはイオンの多重散乱による行路長の増加に由来する補正が本研究のような精密測定の場合には重要であることが明らかになった。種々のエネルギーのイオンが種々の厚さの標的を通過したとき、その角分布がどの様に記述されるかについては必ずしも良く判っている訳ではないので、多重散乱の測定と種々の理論による計算結果との比較検討を行った。標的中のイオンのエネルギー損失が1-60%の場合にはモリエールの理論が良い記述を与えること及び標的中のイオンエネルギーの変化は考慮しなくて良いことが判った。この事実から多重散乱に因る行路長の補正の計算が十分な信頼度で行えることが判り、この成果は広島大学で開催される物理学会において発表される予定である。
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