Research Abstract |
平成10年度は,北海道の火山性湖沼・オンネトー(阿寒国立公園内)を研究対象に,平成10年7月〜9月の夏期,その水収支・化学成分収支に関する観測を実施した.研究目的は,オンネトーの水・化学成分の収支を定量的に評価することによって,湖の水質を決定させ捌幾構,特に周辺の火山(ここでは雌阿寒岳)や地熱活動に係わる地下水系の果たす役割について検討することである. 現地観測の内容は,流入・流出河川の流量,湖水位,気象及び湖水温の連続観測で,そのほか,湖心で湖底トラップによる新生沈殿物採取をおこなった.また,調査時は河川水・温泉水・湖水・底質を採取し,それらの化学分析を行った.さらに,1957年から釧路地方気象台が雌阿寒岳に展開している地震計記録や温泉水の水質記録,及び阿寒湖畔のアメダス・データを集計し,過去のオンネトーの水質斎襄ナの対応関係を探った. 現地調査の結果,オンネトーはpH=4.9〜5.9の酸性湖であるが,湖北側にある強酸性の錦沼溢流水(pH=3.3〜3.7)が河川水・地下水(pH=3.9〜4.1)として流入し,さらに南側から中性に近い河川水(pH=7.0〜7.4)の流入がみとめられた.他方,周辺の温泉水はpH=6.4〜6.5の弱酸性であった.このことから,湖の酸性状態はこの北側流入水が大きく寄与していることが推測される.また,化学分析の結果,湖水はMnの含有量が多く(0.4mg/L),その寄与として南側流入水(Mn,1.4〜6mg/L)及び周辺温泉水(同,2.9〜3.6mg/L)の湧出が考えられる.その他,主要な陽イオン(Na^+,Ca^<++>,Mg^<++>,K^+)及び陰イオン(Cl,SO_4^-)について,北側・南側流入水及び周辺温泉水の間で大きな違いが認められた.現在,得られた気象データから湖面蒸発量を修正shulyakovskiy式を用いて算出し,オンネトー水収支を検討中である.
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