1999 Fiscal Year Annual Research Report
火山性湖沼における水質の形成と変動の機構に関する研究
Project/Area Number |
10640416
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
知北 和久 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70142685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 裕一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20208226)
橘 治国 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90002021)
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Keywords | 火山性湖沼 / pH変動 / 酸性湖 / 水収支 / 化学成分収支 / 地下水湧出 / 地下熱水系 |
Research Abstract |
平成11年度は、北海道の火山性湖沼・屈斜路湖を研究対象に、平成11年4月〜平成12年2月の期間、融雪期・夏季湖水停滞期・秋季多雨期・結氷期にわたって、同湖の水収支と化学成分収支を定量的に評価した。屈斜路湖の水質問題として、1986年に湖水pH=4.6の極小を記録し酸性湖であることが確認されたが、その後pHが上昇して1990年にpH=6.6の極大となり以降6.0〜7.5のほぼ中性状態を維持している。湖水面積76.75km^2、最大水深118mもの大湖が、わずか4年間でなぜこのような急激な水質変化を引き起こしたのか、その前後における水質の維持機構は何なのか、これを同湖の水・物質収支から明らかにすることが本研究の目的である。ここでは、特に流域内のアトサヌプリ(硫黄山)を熱源とする川湯温泉や湖の東岸から湧出する温泉水の寄与に着目した。 屈斜路湖では湖岸での気象観測および船上観測と係留系による連続観測から同湖の伝導度・水温・化学成分の時空間分布や湖面蒸発量を季節的に求め、さらに流入・流出河川の流量・各化学成分負荷量を各季節毎に求めた。各試水の化学分析の結果、湖内での正味の沈殿・吸着・溶出の可能性が低いCa^<2+>、Mg^<2+>、Cl^-、F^-に着目して、これらの収支を評価した。この中でCl^-〜Ca^<2+>間については、1999年8月10日での水・化学成分収支から、Ca^<2+>=378.3μg eq./L,Cl^-=749.5 μg eq./L,G_<in>=9.43m^3/s,G_<out>=6.65m^3/,またCl^-〜F^-間についてF^-=16.5μg eq./L,Cl^-=606.0μg eq./L,G_<in>=2.96m^3/s,G_<out>=0.18m^3/sと与えられた。但し、流出地下水のイオン濃度は、釧路川と同じ値を与えた。ここで、G_<in>、G_<out>はそれぞれ屈斜路湖に関する地下水流入量・流出量である。 ここで、大きな問題として屈斜路湖の水収支における湖水位変化Δhの評価に大きな不確定性を含むことで、これはコリオリ効果による表面セイシュの回転性振動に起因する。そこで、この振動が無視できる平成12年2月28日〜3月4日の結氷期に夏季と同様の観測を実施した。現在、この観測で得られたデータ・試水について分析を急いでおり、この結果から地下水流入・流出量のより正確な評価とこれに伴う化学成分収支評価によって、屈斜路湖の水質変化に寄与する地下流入量とその化学成分がより高精度で明らかになるものと考えている。
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