1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640428
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
品川 裕之 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (00262915)
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Keywords | 超高層大気 / 熱圏 / モデル / ダイナミクス / オーロラ / 加熱 / 鉛直風 / 極域 |
Research Abstract |
熱圏鉛直風の振る舞いを定量的に調べるために、鉛直方向と緯度方向の運動量方程式を含む2次元非静水圧平衡熱圏大気モデルを開発した。この計算機モデルは、時間依存の圧縮性流体方程式を差分法を用いて解くものであり、粒子・運動量・エネルギー輸送過程の精密な取り扱いに重点を置いているのが特徴である。次に、このモデルによる計算結果と観測データとの比較を行った。データは、1997年2月にノルウェーで得られたものを用いた。観測装置はファブリペコー干渉計で、熱圏下部(高度約110km)と、熱圏上部(高度約250km)の風速と大気光強度が測定された。オーロラ発生時には、熱圏領域で約40m/sの比較的大きな鉛直風が観測された。この鉛直風は、約40分の周期で振動しており、熱圏下部と熱圏上部の鉛直風の位相がかなりずれている場合があった。この時のオーロラ活動に伴う加熱を入力としてモデル計算を行った結果、鉛直風速度は観測されたものとほぼ一致した。また、熱圏下部の鉛直風の時間変動は加熱源の時間変動と大体一致するが、熱圏上部の鉛直風は加熱源の時間変動と大気波動運動の重ね合わせで変動することがわかった。観測された熱圏下部と熱圏上部の鉛直風の位相のずれは、このメカニズムで大体説明できると考えられる。また、ジュール加熱の場合には、鉛直運動は熱圏下部では非常に小さく、熱圏上部で大きくなるのに対し、粒子の降り込みによる加熱の場合は、熱圏下部でも10m/s程度の鉛直運動が励起されることがわかった。現在、いくつかのグループでファブリペロー干渉計や非干渉散乱レーダーなどによる多点同時観測が進められており、熱圏風の3次元構造、熱源の時間変動、空間分布等がさらに正確に求められつつある。今後は、本研究の熱圏モデルとこれらの観測データを比較することにより、熱圏風の振る舞いをより詳しく調べる予定である。
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