1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640448
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 晴良 京都大学, 大学院理学研究科, 助教授 (10181588)
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Keywords | 白亜紀 / フィロセラス類 / アンモナイト / Hypophylloceras属 / タフォノミー / 殻の破損 / 浮上するパス |
Research Abstract |
白亜紀フィロセラス科アンモナイトの化石化過程を調べるため,北海道の蝦夷層群(前弧海盆で堆積した深海相)の調査をおこなった.その結果,Hypophllyoceras属アンモナイトは,産出する岩相に関係なく,住房や気室が大きく破損しているなど,共産する他のアンモナイトとは大きく異なる保存状態を示すことがわかった. 蝦夷層群の深海相では,Gaudrycerasなど共産する他のアンモナイトの大半は,住房を保ったまま化石となっている.これに対し,観察した300個体のHypophyllyocerasの化石のうち,住房が残されていたのはわずかに4個体のみであった.また,殻の破損の特徴を標本の切片ならびに薄片でくわしく観察した結果,Hypophyllocerasが示す住房や気室の破損は,死後,堆積物に埋没する以前に起きていたことがわかった.これは,他のアンモナイトの殻破壊が,埋没後の続成作用に起因する場合が多いのとは対照的である. 他のアンモナイトでは,死後,水圧によって殻の中に海水が侵入し,死殻はすぐに海底に沈むと考えられる.その結果,死穀はあまり広くは拡散せず,しばしば特定の場所から多産する.これに対しHypophyllocerasの化石は,堆積相とは関係なく,浅海相から深海相まで広く分散し,一ヵ所からかたまって産出することがない.このような特徴から,Hypophyllocerasは,死後,一度は海面に浮上して漂流する過程で死殻が拡散する“浮上するパス"をたどった可能性が高いことがわかった. 今後,Hypophyllocerasの保存・産状をさらに詳しく観察すれば,アンモナイトが化石として保存されるために必要な具体的条件を解明できる可能性がある.
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Research Products
(1 results)