1998 Fiscal Year Annual Research Report
構造モデルを必要としない粉末X線結晶構造プログラムの開発
Project/Area Number |
10640458
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 裕行 北海道大学, 大学院理学研究科, 講師 (70157436)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 武 北海道大学, 大学院理学研究科, 助教授 (60211190)
|
Keywords | 粉末X線回折 / 結晶構造解析 / リートベルト法 |
Research Abstract |
近年粉末法による構造解析(リートベルト法)が普及し多く用いられている。しかしリートベルト法に於ける最大の問題点は概略の構造データを与えないと計算できないことであり、今後の発展のためには構造モデルを容易に得る方法を開発する必要がある。そこで、粉末X線回折データをもとに自動的に結晶構造を決定するプログラムの開発を進めた。すなわち (1)空間群、(2)組成式とZ数(単位格子中の式数)、(3)格子定数、(4)粉末X線回折データ(d値と積分強度)、が与えられたとき、構造を自動的に捜し出し原子座標と温度因子とを精密化する計算プログラムの開発をめざした。以下のような考えでプログラムを作成し妥当性を検討した。温度因子は等方性としB=1.0で固定したので、求めるべきパラメーターは各原子の部分座標(x,y,z)である。原子座標が決まれば理論的に粉末X線回折データを計算することができ、測定値と比較してモデルの適合度を判定することが出来る(R因子:低いほど適合度が高い)。今年度は最も単純に乱数で原子座標を発生させ、R因子で選別するプロセスを検討した。R因子が低くても全く意味のない構造が得られるのでR因子以外の制約条件を導入した。一つはポーリングの第一則であり、「原子間距離はお互いのイオン半径の和より大きい」という条件を用いた。さらにエワルドの方法によりエネルギー計算を行い、エネルギー値が正になるモデルも棄却した。この方法をいくつかの構造既知の物質に試みたところ、実用的な時間内で構造を解くことができた。独立な原子が6個の構造未知の合成物質に対し本プログラムを用いたところ結晶構造を解くことに成功し、以上の考え方が有用であることが証明された。解かれた構造については現在論文にまとめている。
|