1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640466
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
甲斐 綾子 山口大学, 工学部, 講師 (50253167)
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Keywords | 相転移 / カルサイト / バテライト / アミノ酸 / 転移温度 / 転移エンタルピー / 炭酸カルシウム |
Research Abstract |
1. 結晶成長及び結晶性評価 カルサイト形成条件下で水溶液中に生体構成アミノ酸13種類(非極性:Ala;L-Val;L-Leu;L-Pro,非荷電極性:Gly;L-Ser;L-Thr-;L-Asn;L-Gln,酸性:L-Asp;L-Glu,塩基性:L-Lys;L-Arg)を0.5〜15mol%含有させ炭酸カルシウムを結晶成長させた.非荷電極性及び酸性アミノ酸の場合,共存するアミノ酸濃度上昇とともにバテライト比率が増加し90%以上にも達した.一方,非極性及び塩基性アミノ酸では,低濃度領域ではカルサイトだけが形成されたが,高濃度ではバテライトが形成されることがわかった.これらのX線回折ピークは粉末パターンと一致し,優位に成長した面は確認されなかった.また,バテライトビークの線幅がカルサイトよりも3倍以上広いこと及びSEM像から得られた結晶粒径より,バテライトはカルサイトに比べ結晶性が悪いと推測される. 2. 相転移に伴う熱パラメーター 示差走査熱量測定(DSC)により,バテライトを含む試料では450℃付近に発熱ピークが観察された.このピーク温度前後でバテライトからカルサイトヘ相転移していることから,この発熱ピークはバテライトの相転移に伴うものであると考えられる.解析の結果,それぞれの試料の転移温度とその試料に含まれているアミノ酸自体の融解(分解)温度には相関が認められた. 3. まとめ 非荷電極性及び酸性アミノ酸は低濃度でもカルサイト形成を阻害し,熱的に不安定なバテライト構造を安定化することがわかった.非極性及び塩基性アミノ酸においても高濃度になれば,同様にバテライト形成が促進された.また,バテライト結晶の中に取り込まれたアミノ酸が分解することによりバテライト構造を不安定化し,カルサイトへの相転移を誘導すると考えられる.さらに結晶中に取り込まれたアミノ酸濃度の変動を調べることにより,転移エントロピーの詳細な解析を行う予定である.
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