1998 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学法による,ペロフスカイトへのアルミナの固溶効果
Project/Area Number |
10640467
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
赤松 直 高知大学, 教育学部, 助教授 (60211695)
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Keywords | 分子動力学法 / MD / 固溶体 / アルミナ / ペロフスカイト / ペロブスカイト / 体積弾性率 |
Research Abstract |
地球の下部マントルに多量に存在するペロフスカイトは,アルミナ成分Al203を一定量固溶していると考えられている.しかしながらこの物質は合成が容易でなく,物性データの蓄積は限られている.本研究では,分子動力学(MD)計算によって,ペロフスカイトにアルミナ成分が固溶した際の結晶学的・熱力学的・弾性的性質の変化を予測するとともに,結晶内の原子配置がこれらの諸物性に及ぼす効果を考察する.本年度は,MgSiO3結晶(Pbnm)を基準に,(Mg+Si)の代わりにAlを2個ランダムに置き換えるという方法で固溶体結晶を作成し,これら結晶の格子定数・体積・モルエンタルピー・体積弾性率を求めた.主要な結果は以下の通りである. 1. 常温常圧下では,(1)Al濃度が増すにつれて格子定数cの長くなる傾向が顕著である.このことにより格子体積も増大する.(2)Al濃度が増すにつれて,格子定数a/sqrt(2),b/sqrt(2),c/2の値の差が大きくなる.すなわち,理想的な立方晶系結晶からの歪みが大きくなる.以上の(1)および(2)は実測値(e.g.,Irifune etal.,1996;Kubo,1999)と調和的な結果である. 2. 体積弾性率KOは,Al濃度が増すにつれて減少する.パイローブ組成(Mg3Al2Si3012)のペロフスカイトのKOは,MgSiO3組成のものに比べて約2割小さい.この傾向は,高X線回折実験によって最近得られた結果(久保たち,1999)と定性的に調和的である. 3. 高圧(約40GPa)になると,格子定数cおよび格子体積のAl濃度依存(上記1参照)がほとんどなくなる. 4. モルエンタルピーを組成に対してプロットすると,データ点は上に凸の曲線上に並ぶ.すなわち,混合の過剰エンタルピーは正である.
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