1998 Fiscal Year Annual Research Report
振動励起ラジカルの衝突過程における振動緩和過程と化学反応過程の分岐比の決定
Project/Area Number |
10640486
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 勝義 新潟大学, 理学部, 助教授 (90210385)
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Keywords | ヒドロキシルラジカル / メタン / 励起酸素原子 / 振動緩和 / 化学反応 / 反応速度定数 / Profile積分法 |
Research Abstract |
振動励起分子(ラジカル)と他分子との衝突における2つの過程(振動緩和および化学反応)の分岐比を決定する実験的研究を行った。O_3/CH_4/N_2混合系にKrFレーザ(248nm)を照射し,励起1重項酸素原子O(^1D_2)とCH_4の反応 O(^1D_2)+CH4→OH(0【less than or equal】υ【less than or equal】4)+CH_3 (1) によりパルス的に生成した5準位のOHラジカルをレーザ誘起蛍光(LIF)法により検出した。引き続く OH(1【less than or equal】υ【less than or equal】4)とCH_4の衝突にお OH(υ)十CH_4→OH(υ-1)+CH_4 (振動緩和) (2) →反応生成物 (化学反応) (3) によって経時変化する各振動準位上のOHラジカルの分子数を追跡した。得られた経時変化曲線はmulti-exponential型であり,非線形最小二乗フィットによる解析では大きな誤差が生じる。そこで本研究では,独自に開発・確立した線形回帰法であるProfile積分法を利用し,OH(υ【less than or equal】4)+CH_4反応の精度高い総括反応速度定数を決定した。特に,υ=4に関する速度定数は初めての報告である さらに,振動準位ごとの総括反応速度定数を振動緩和と化学反応の速度定数に分離する際に,反応(1)で生成するOHの初期振動分布の情報を利用する新しい解析方法を考案し,υ=1および2について速度定数を決定した。結果を以下に示す。(単位はすべてcm^3molecule^<-1>s^<-1>) k(υ=2→υ=1緩和)=(1.1±0.4)×10^<-12>, k(反応)=(0.9±0.4)×10^<-12> k(υ=1→υ=0緩和)=(3.5±0.6)×10^<-13>, k(反応)=(2.1±0.6)×10^<-13> OHラジカルに限らず,過去に,振動励起分子の振動緩和過程と化学反応過程の分岐比を実験的に決定した例はなく,本研究はその最初の成功例である。 従来の非線形フィットの問題点を解決し,信頼度の高い反応速度定数を与えるための線形解析法とその応用例を示した意味で,本研究成果の学問的意義はきわめて大きい。
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