1998 Fiscal Year Annual Research Report
2価パラジウム触媒を用いる高立体選択的な分子内環化反応の開発と天然物合成への応用
Project/Area Number |
10640514
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平井 美朗 富山大学, 理学部, 教授 (70111747)
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Keywords | パラジウム錯体 / 高立体選択的 / SS20846A / 消化管運動抑制作用 / (S)-glycidol / 1-deoxymannojirimycin / グリコシダーゼ阻害作用 / アザ糖類 |
Research Abstract |
アルカロイドやプロスタノイド等のへテロ脂環式生物活性物質には,その環上に多くの不斉中心が存在しており,これらの合成には,オレフィンへのへテロ原子の分子内環化反応が有用な手段となっている。申請者らはこれまでに二価のパラジウム錯体を用いることによって,分子内にアリルアルコール部を有するウレタン体の分子内へテロ付加環化反応が,高立体選択的に進行することを見いだしている。今回,本反応のさらなる展開を目的として,SS20846A,pseudodistominC,negamycin及び1-deoxymannojirimycin等の数種の生物活性天然物の立体選択的な合成を企画した。これまでの成果を以下に示す。 初めに,環上に通常の手法では得られにくい立体化学を有し,消化管運動抑制作用を有するSS20846Aの合成を行った。まず,(S)-glycidolから11段階を経て,鍵反応の基質であるアリルアルコール体を合成し,10mol%のPdCl_2(CH_3CN)_2を用いて環化反応を行ったところ,収率89%で環化生成物であるピペリジン体を立体選択的(trans:cis=85:15)で得ることが出来た。この環化体の環上の立体化学は,SS20846Aの立体化学と同じであったので,これより,側鎖の変換と脱保護化を行い,SS20846Aの全合成を達成した。この成果についてはTetrahedron Lettersに掲載された。また,D-mannnitolを出発物質とし,同様の手法を用いて,グリコシダーゼ阻害作用を有するアザ糖の一種である1-deoxyman ojirimycinの立体選択的な合成も行った。この成果については,日本化学会第76春季年会で報告予定である。他の標的化合物の合成に関しては,現在進行中である。
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Research Products
(1 results)