飽和および不飽和脂肪酸融液中の分子の動的挙動とクラスター構造

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10640566
• Research Institution: Kitasato University
• Principal Investigator: 岩橋 槇夫 北里大学, 理学部, 教授 (70087120)
• Keywords: シス-6-オクタデセン酸 / シス-9-オクタデセン酸 / シス-11-オクタデセン酸 / トランス-9-オクタデセン酸 / オクタデカン酸 / スピン-格子緩和時間 / 自己拡散係数 / 液体のX線回析

Research Abstract

炭素数18で、シス型二重結合を持つシス-6-オクタデセン酸、シス-9-オクタデセン酸、シス-11-オクタデセン酸、またトランス型の二重結合を持つトランス-9-オクタデセン酸、飽和のオクタデカン酸について、分子内セグメントの運動性、並進運動のしやすさを表す自己拡散係数、分子間相互作用に関係する微視的粘性、また、液体中のパッキング状態をNMR,蛍光、ESR、密度、液体のX線散乱測定により調べ、各脂肪酸の分子構造とそれらの脂肪酸の純液体中に存在すると考えられるクラスター構造との関係を明らかにすることを目的に研究を行った。分子内の運動性と自己拡散係数の順にはかなりの相関が見られたが、密度から得られた分子のmol体積と自己拡散係数の順には大きな矛盾があった。この矛盾を解決すべく、各脂肪酸融液のX線回析を種々方法で試みた。融点の低いシス-6-オクタデセン酸、シス-9-オクタデセン酸、シス-11-オクタデセン酸については回析像を得ることが出来、融液中でそれぞれの脂肪酸のダイマーが互いに入り組んだ形(指組構造)で配向したクラスターが存在することが明らかになった。しかし、融点の高いトランス-9-オクタデセン酸、飽和のオクタデカン酸については従来の方法では測定出来なかった。そこで、本年度はより精密で、より高温までの測定が出来るようにX線回析装置を工夫し、すべての脂肪酸について室温から120℃までのX線回析を行った。その結果、トランス-9-オクタデセン酸や飽和のオクタデカン酸もシス型の脂肪酸と同様に融液中に指組構造のクラスターが存在することが明らかになった。このクラスターモデルからmol体積と自己拡散係数の順の矛盾の原因が明らかに説明された。