1999 Fiscal Year Annual Research Report
メスバウアー分光法による河川底質中の鉄の状態分析を用いた河川環境分析
Project/Area Number |
10640583
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 基之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10167645)
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Keywords | メスバウアー分光法 / 鉄の状態分析 / 河川底質 / 河口域 / パイライト / 垂直分布 / 硫酸還元菌 |
Research Abstract |
都市河川の河口域では有機物を多く含む堆積物がたまり、嫌気的環境が形成されている。その中で、海水などを起源とする硫酸イオンが硫化水素などに還元されることが知られている。一方、底質中の鉄化合物は硫化水素と反応して鉄の硫化物へと化学変化する。本研究では、非破壊で鉄の化学状態を分析できる^<57>Feメスバウアー分光法を用いて、いくつかの都市河川で採取した底質中の鉄化合物の化学状態とその垂直分布について検討を行った。その結果、河口域底質中の鉄化学種は、高スピン3価、高スピン2価、パイライト(FeS_2)、磁気分裂成分の4種類が存在することがわかった。ピークの相対面積から各成分の垂直分布を見ると、多摩川河口域の場合、いずれの季節においてもパイライトは約20cm以深で層状に分布しているのに対し、高スピン2価及び3価の鉄が相補的に変動しているのがわかった。また、隅田川と旧中川を結ぶ北十間川に於いても、パイライトの層状分布が見られた。河口堰やダムの建設で最近、海水が遡上するようになったと言われている相模川では、パイライトの検出されない試料が多かったが、排水処理施設の近くでは同様の層状分布が見られた。これらの底質中に含まれるパイライトの生成には、硫酸還元菌が大きく寄与しているものと考え、実際に底質中に生息する硫酸還元菌の菌体数の垂直分布を、平板培養による間接計数法にて測定した。その結果、パイライトの垂直分布と比較的よい一致が見られた。
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[Publications] A.Kuno,M.MATSUO,B.Takano: "Mossbauer spectroscopic study on vertical distribution of iron components in estuarine sediments collected from Tama River in Tokyo"Hyperfine Interactions(C). 3巻. 317-320 (1998)
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[Publications] A.Kuno,K.Sampei,M.MATSUO 他: "Vertical distribution of elements in non-polluted estuarine sediments determined by neutron induced prompt gamma-ray and instrumental neutron activation analyses"J.Radioanal. Nucl. Chem.Articles. 239・(3). 587-590 (1999)
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[Publications] A.Kuno,M.MATSUO,C.Numako: "In situ chemical speciation of iron in estuarine sediments using XANES spectroscopy with partial least-squares regression"J.Synchrotron Radiation. 6・(3). 667-669 (1999)