1998 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的方法による微量金属イオンスペシエーションの標準化
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10640592
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
横井 邦彦 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30144554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保埜 公二 大阪教育大学, 教育学部, 助手 (00269531)
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Keywords | 吸着濃縮 / ボルタンメトリー / 微量分析 / スペシエーション / 金属イオン / フミン酸 / 錯化容量 / 条件安定度定数 |
Research Abstract |
本年度はスペシエーションの標準化のための基礎的データの収集を目的として、腐食物質研究会によって調製されたフミン酸の標準物質を天然の有機配位子モデルとして用い、吸着濃縮ボルタンメトリーにより金属イオン滴定を行うことで、ニッケルイオン及び銅イオンの錯化容量(CC)と条件安定度定数(K')の測定を行った。吸着濃縮のための配位子としてジメチルグリオキシム(DMG)およびオキシン(OX)を用いた。添加金属濃度に対してlabileイオン濃度を測定し、既知の方法でデータの解析を行った。ニッケルイオンとフミン酸との錯形成反応が充分平衡に到達した後のCC(フミン酸1ppm当たり)は、DMG濃度の増加に従って減少し、log K'は増加傾向を示した。また、銅イオンについても同様な傾向が認められた。これはフミン酸自身が単一の化合物ではなく、各種の配位可能な官能基を有する高分子量の有機物であるため、種々の錯形成能力を持つ部位が存在するために得られた結果であると考えられる。また、フミン酸との錯形成反応の速さは、ニッケルイオンの方が銅イオンよりも速いことが認められ、よく知られた低分子量配位子に関する配位子交換反応速度と同様な傾向であった。一方、銅イオンのCCはニッケルイオンの約10倍の値を示したが、これは従来知られている錯体化学からは全く予測できない事実であり、天然の高分子量配位子の持つ特徴的な性質であると考えられる。さらには、強い配位能力を持つDMGやOXの場合よりも大きなK'が検出されたことは極めて興味深い。スペシエーショシに関する補助的な検討として、紫外線を用いた非汚染型試料分解、ランタノイドイオンを識別するための多座配位子の合成ならびにそれを用いた溶媒抽出、巨大化合物識別のための大環状混合原子価錯体の生成反応などの研究も平衡して行い、新規なデータを得ている。
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[Publications] 横井 邦彦: "低圧水銀ランプを用いた紫外線照射による有機物分解に及ぼす各種の因子" 第59回分析化学討論会講演要旨集. 161 (1998)
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[Publications] 久保埜 公二: "異種多座配位子の併用による金属イオンの溶媒抽出" 第59回分析化学討論会講演要旨集. 175 (1998)
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[Publications] 藪 みやび: "大環状混合原子化モリブデン錯体の生成における前駆物質" 第48回錯体化学討論会講演要旨集. 175 (1998)
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[Publications] 横井 邦彦: "マンデル酸類縁体を用いた吸着濃縮ボルタンメトリーによるチタンの高感度定量" 日本分析化学会第47年会講演要旨集. 332 (1998)
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[Publications] 久保埜 公二: "異種多座配位子の併用によるランタノイドイオンの抽出分離" 日本分析化学会第47年会講演要旨集. 337 (1998)
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[Publications] 久保埜 公二: "混合配位子抽出系による希土類イオンの相互分離" 日本化学会第76春季年会講演要旨集. (掲載予定). (1998)