1998 Fiscal Year Annual Research Report
イソウロウグモ類の餌資源利用様式の特殊化とそれに伴う生活史形質の進化
Project/Area Number |
10640610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50182019)
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Keywords | 盗み寄生 / 生活史進化 / 種間関係 / クモ / 系統樹 |
Research Abstract |
本年度は,イソウロウグモ類の餌資源利用様式と生活史形質の一部を明らかにすることができた. 1) 餌資源利用 シロカネイソウロウグモとミナミノアカイソウロウグモは通常,寄主に無視されて網上に残された小型の半翅目や双翅目を捕獲していることが多く,稀に寄主が捕らえた大型の餌を寄主とともに摂食したり,寄主が捕らえた餌を横取りしていた.また,ミナミノアカは,寄主の網上の餌が少ない時期には糸を頻繁に摂食していることが新たに判明した. ミャシタイソウロウグモも主に網上に残された小型餌を捕獲していたが,餌の横取りや寄主の捕食,さらに糸食いも観察された. チリイソウロウグモは幼体期にはシロカネやミナミノアカと同様であったが,成長するにつれ餌の横取りが中心となり,寄主食いも見られるようになった. 2) 生活史形質 シロカネとミナミノアカは年に数世代を繰り返す多化性であることが判明した.ミナミノアカは飼育の結果,40日ほどで1世代が完了するという他のクモには見られない早い成長,発育を示した.さらに本種は,糸食いだけでも50日ほどで成体になれるという驚くべき事実も判明した.ミヤシタイソウロウは,本州では1化性で繁殖期は初夏で初秋に次世代の幼体が出現することが判った. ミナミノアカのクラッチサイズは42-66,シロカネは14-32であったが,卵直径はともに0.65mm程度で大差なかった.
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