1998 Fiscal Year Annual Research Report
アゲハ類の精包における有核精子と無核精子の動態と雄の投資物質
Project/Area Number |
10640612
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
渡辺 守 三重大学, 教育学部, 教授 (80167171)
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Keywords | ナミアゲハ / ハンドペアリング / 精包 / 有核精子束 / 有核精子 / 無核精子 / 貯精嚢 / ナトリウムイオン |
Research Abstract |
卵や幼虫を飼育して羽化させたナミアゲハをハンドペアリングによって交尾させた。本研究は交尾を開始したナミアゲハの精子の授受について、大きく4つのステップに分けられる。まず、交尾中断実験を行ない、精包と精子の注入過程が調べられた。次に室温約26℃における交尾(約54分)終了直後の精子を調べた。交尾直後の精包内に、有核精子は束として無核精子は自由精子として注入されている。1本の精子束には256本の有核精子が束ねられているので、有核精子の数は約8,000と計算された。一方無核精子の数はその10倍以上あった。有核精子束は交尾終了後先端部からほどけはじめ、6時間後には消失した(消失速度:3.7束/時)。そこで交尾終了直後から雌の交尾嚢内の精子数の変遷を調べた。精子束の消失にもかかわらず、精包内の自由有核精子は増加しなかったので、有核精子はほどけるとすぐに貯精嚢へ移動したと考えられる。精包内の無核精子の減少速度は269.6本/分で有核精子(16.0本/分)の10倍以上だった。なお、予備的に貯精嚢内の精子も調査している。アゲハ類の雄が吸蜜だけではなく吸水行動を示すことはよく知られている。その目的としてナトリウムイオンの摂取が指摘されたものの、実際にどのような利益を得ているのか明らかにした研究はなかった。そこで、ナミアゲハの雄を各種の濃度の塩化ナトリウム溶液を与えて飼育し、生産した精包を調べた。羽化直後から三角紙に入れた雄の日当たり吸収量は0.001モルの溶液で30mgを超え、蒸留水よりも多かったが、1モル溶液はほとんど吸収しなかった。ケージに入れて自由に飛翔させた雄は高濃度の溶液も吸収するようになり、交尾させた雄の吸収量はさらに増加した。多くの個体は「排水しながら吸水」しているので、排出量も測定したところ、実際に雄の体を通過した溶液の量は100mgを超えていた。これらの結果を、注入した精包の量とのかかわりで考察した。
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