1999 Fiscal Year Annual Research Report
アゲハ類の精包における有核精子と無核精子の動態と雄の投資物質
Project/Area Number |
10640612
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
渡辺 守 三重大学, 教育学部, 教授 (80167171)
|
Keywords | ナミアゲハ / ハンドペアリング / 精包 / 有核精子束 / 有核精子 / 無核精子 / 貯精嚢 / ナトリウムイオン |
Research Abstract |
本研究はナミアゲハの精子の授受について、大きく4つのステップに分けている。まず、交尾中継実験を行ない、精包と精子の注入過程を調べたところ、有核精子と無核精子は交尾開始後30分経つと注入され始めていた。交尾終了直後の精包には、有核精子は束として無核精子は自由精子として注入されている。前者の平均は42.7本だった。1本の精子束には256本の有核精子が束ねられているので、自由有核精子の数は約11,000と計算される。一方無核精子の数は160,000を数えた。有核精子束は交尾終了後先端部からほどけはじめ、6時間後には消失した。交尾終了直後から精子束は消失し始めたが、精包内の自由有核精子は交尾終了後3時間以降は増加しなかったので、有核精子はほどけると直ちに貯精嚢への移動を開始したと考えられる。精包内の無核精子は交尾直後1時間より減少を始め、1日経つとほとんど精包内で見られなくなった。交尾直後から貯精嚢内の精子を調査したところ、12時間後に無核精子が出現し、1日経って有核精子が到着した。貯精嚢の形態を考慮すると、この状況は無核精子が貯精嚢の奥へと詰まることになるので、雌が多回交尾したときに前夫の有核精子を押し込む働きがあると考えられる。なお、雄に連続して交尾させると、注入物質(精包+附属腺物質)の量は半減するものの、両型の精子数はそれほど減らず、結果として、精子密度の高い精包が生産されいてた。無核精子が貯精嚢において押し込みを行なうとするならば、精子密度を高める戦術は適応的であるといえよう。アゲハ類の雄が吸蜜だけではなく吸水行動を示すことはよく知られている。その目的としてナトリウムイオンの摂取が指摘されたものの、実際にどのような利益を得ているのか明らかにした研究はなかった。そこで、ナミアゲハの雄を各種の濃度の塩化ナトリウム溶液を与えて飼育し、生産した精包と精子数を調べ、最適な濃度の存在を示唆することができた。
|
Research Products
(1 results)