1998 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルのポピュレーション抑制期に現れる性成熟の遅延の生態学的研究
Project/Area Number |
10640614
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 明雄 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 邦夫 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60158623)
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Keywords | 性成熟 / 体重 / 群れの移籍 / ヒトリザル / 群れサイズ |
Research Abstract |
今年度は、幸島で調査を行った。幸島では、個体の成長を知るために、群の全個体の体重を測定している。年齢と体重を指標にして思春期個体の行動を調べた。思春期オスは顔と体つきが変化するので、毎年個体識別をする必要がある。まず、初めの1ヶ月は、個体識別に努めた。ついで、秋の調査を行った。幸島には、主群の他に小さい分裂群がある。この小群には3頭のオトナメスがいるが、群としてのまとまりは非常に薄かった。思春期オスが、主群を離れる時期に、この小群に近づいた。この小群の周りに現れる思春期オスの確認を行った。小群のホームレーンジは、主群の一番利用しない地域に小さく設定されていたが、主群の方は、小群の行動域も利用した。小群は、主群が来ると、主群を静かにさて隠れた。主群と小群での採食内容の相違を調べた。今年度は、秋の果実の実りは非常に悪かった。ただ、アラカシの実、つまりドングリだけは多かった。主群、小群共にアラカシを食べたが、小群の行動域には、アラカシは3採食パッチしかなく、主群の行動域とくらべて、極めて採食条件が悪かった。しかし、小群の行動域には、二次林の傾向が強く、主群のものよりカラスザンショウが多く、思春期オスは、これをよく採食していた。こうした採食条件の相違が小群の周りに出てくる思春期オスの数に影響しているのか、次年度と比べてみる必要がある。その他島の中の思春期オスの分布状態も調べたが、まだ十分なデータにはなっていない。今年度は、思春期オスのデータを得るのに、まだ手探り状態であったが、来年度はもう少し、多くの個体のデータをとれるよう工夫する必要がある。
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