Research Abstract |
本年度は,調査地(神奈川県真鶴岬)で数度の採集調査を行い,得られたノコギリハリアリのコロニーを用いて,まず1個体あたり抽出できるDNA量を働きアリを材料にして調べた。ノコギリハリアリは体長4mmの微小な種だが,個体あたり400-700ngの高分子DNAが抽出できることがわかった。 次に,これらのアリを材料として,CAP-PCR法によってDNA多型の検出を試みた。この方法では,CA(あるいはGT)の7回の反復配列に異なる組み合わせの4塩基の配列をつなげ,後者によって特定化されるCAの反復配列の遺伝子座2個の間に挟まれたDNA断片の長さの違いが遺伝的多型として検出される。以下の8種類のプライマーを準備した:(CA)_7AGTG,(CA)_7AGTA,(CA)_7AGTT,(CA)_7AGTC,(CA)_7GTCG,((CA)_7GTCA,(CA)_7GTCT,(CA)_7GTCC。反応液量を25ul,プライマー量を10ピコモルと固定し,鋳型DNA量を10-40ng,アニーリング温度を48,50,52,54℃と変化させて,安定的な多型の検出を試みたが,個体間で有無に違いが見られるバンドでも,繰り返しの反応において再現性が低いものが多く,本実験に入れるほどの多型マーカーをまだ確立できない。 この方法を試したコロニー数は少なく,今後さらに多数のコロニーで有効な多型を探すこと,次いで,10塩基のランダムプライマーを用いて多型検出を行うこと,さらにこれら2法で有効な遺伝マーカーが見つけられない場合,ツヤクシケアリからクローニングされた繰り返し配列pMY7,もしくは合成のミニサテライトDNAをプローブとするサザン法でのフィンガープリント法を試す予定である。
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