1998 Fiscal Year Annual Research Report
緑色イオウ光合成細菌のキノール酸化還元酵素はb/Rieskeタイプであるか?
Project/Area Number |
10640631
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大岡 宏造 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30201966)
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Keywords | 緑色イオウ細菌 / 光化学反応中心 / チトクロムc / キノール酸化還元酵素 / 電子伝達 / 光合成 |
Research Abstract |
緑色イオウ細菌は、高等植物や藍藻の光化学系Iと類似したFe-Sタイプの光化学反応中心をもつ光合成細菌である。最近、チトクロムczからP840への電子伝達は、反応溶液中の粘性に依存することを見いだした。これはチトクロムcz分子の溶液中での“揺らぎ"に起因するものと考えられ、今回、他のタンパク質複合体との相互作用について検討することにした。 膜標品を用いたフラッシュ照射実験では、antimycinA存在下、チトクロムczの酸化・再還元とともにチトクロムbの還元が観察された。またstigmatellin存在下、チトクロムbの還元は阻害され、チトクロムczの酸化後の再還元が極端に遅くなった。これらの特性は、緑色イオウ細菌の膜標品中にはQ-サイクルにもとづくキノール酸化還元酵素が存在することを示している。また556nmにa吸収帯をもつ膜結合型チトクロムc(c1 ?)の存在が新たに見いだされ、一連の反応は次のようなスキームで進行することが推察された。 キノール->Ricskc->cyt c-556(c1 ?)->cyt cz->P840チトクロムczは、構造的に大きく“揺らぎ"ながら、キノール酸化還元酵素と反応中心複合体との間の電子伝達を直接に仲介しているらしい。 今回、緑色イオウ細菌のキノール酸化還元酵素の活性をはじめて測定することに成功した。緑色イオウ細菌は地球上の光合成生物の中でも最も原始的な反応中心をもつと考えらる。今後、キノール酸化還元酵素の実体を明らかにすることは、光合成電子伝達系の進化的成立過程および構造・機能の相関性をより深く考察する上で興味深い。
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