1998 Fiscal Year Annual Research Report
根のinvitroクリープ粘弾性解析による細胞壁伸展機構の研究
Project/Area Number |
10640637
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
谷本 英一 名古屋市立大学, 自然科学研究教育センター, 教授 (90080283)
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Keywords | 根 / 細胞壁 / 伸展性 / 成長 / ジベレリン / クリープ粘弾性 / 粘性係数 / 弾性係数 |
Research Abstract |
1) クリープ粘弾性計測条件の調査: クリープ粘弾性計測には,変形荷重と変形速度の設定が重要である。変形速度は0.5mm/sec程度,変形荷重は,根の断面積当たりの荷重が20-25g7m^2程度が適切であり,この条件で細胞壁粘弾性をKelvin-Voigt-Bergersモデルに基づく物理常数で表せることが分がった。 2) ジベレリンによる伸長成長と細胞壁粘弾性の変化: 上記の条件でジベレリンの効果を調査した。ジベレリン合成阻害剤・アンシミドール処理によって細胞壁の伸展性が低下し,粘性係数と弾性係数が増加し,伸展性の低下が粘性係数と弾性係数の増加に起因することが示された。これら粘弾性係数の増加は,ジベレリン処理によって阻止され,粘性係数と弾性係数がジベレリンによる制御を受けていることが判明した。このジベレリンの作用がイネ科植物(イネ)と木本植物(チャ)にも見られるか否かをさらに調査中である。 既に,イネ葉鞘のジベレリン誘導伸長ではこの方法で細胞壁伸展性の増加が確認された(Planta,205,145-152,1998)。ペクチンとヘミセルロースの分子変動との関係は現在なお調査中である。 3) 酸成長と細胞壁の粘弾性: 酸生長における細胞壁粘弾性解析は細胞壁の伸展性と粘弾性係数の変動との関係を明らかにするモデルケースとしての意味もある。その結果,pHの低下に伴って,粘性係数の低下が特異的に認められ,pH3.0付近では,pH6.0の値の1/3以下に低下した。酸生長の要因の一つは,Expansinタンパクによる多糖分子間の滑り現象ではないかと考えられているので,このような分子間変動が粘性係数の低下に対応するのではないかという知見が得られた。なお,この知見は下記の国際シンポジウムで発表し,論文は投稿中である。 Fifth International Symposium on Structure and Function of Roots,Stara lesna,Slovakia,Aug.31-Sept.4,1998
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[Publications] C.Matsukura, S.Itoh, K.Nemoto, E.Tanimoto, J.Yamaguchi: "Promotion of leaf sheath growth by gibberellic acid in a dwarf mutant of rice" Planta. 205. 145-152 (1998)