1998 Fiscal Year Annual Research Report
菌類の接合胞子中における核のアポトーシス現象の解析
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10640645
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大瀧 保 東北大学, 遺伝生態研究センター, 教授 (30007158)
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Keywords | ヒゲカビ(Phycomyces) / 接合胞子 / 減数分裂 / 菌糸の再生 |
Research Abstract |
ヒゲカビの接合胞子中には、(+)と(-)の両接合型の核が無数に移動し、核の合体が起こるものと考えられるが、発芽後まで生残できるのは、僅か1個か2個の2倍体核だけで、残りの核は死滅する。この機構に関して、次のような知見を得た。 1. 各5日毎に両接合型を接合させ、あらゆる齢の接合胞子を入手し、解析できる系を確立し、接合胞子の形態変化を経時的に観察した結果、接合後10日目で物理的な堅さが5倍に増加して極大に達し、50日目から徐々に減少し、発芽(80日目付近)直前に元に戻った。また、接合胞子中の細胞質は休眠期の進行と共に透明化し、大きな油滴が中央に形成され、発芽直前には再び不透明化し、油滴も消失することがわかった. 2. 種々の令の接合胞子に微小なハサミで傷をつけ、その傷口から再生した菌糸および胞子嚢柄胞子を解析することによって、接合胞子中の核の動態を推定した結果、接合後少なくとも10日目までは接合胞子中で減数分裂は行われていなかった。10日目以後の接合胞子からは菌糸の再生は全く起こらなかった。 3. 種々の遺伝的マーカーをもった親株の間で形成させた接合胞子の核を、一般に再生力の非常に強い胞子嚢柄に注入し、そこから再生してきた胞子嚢柄の胞子を解析したところ、30日目以降の接合胞子の核に乗り換えの起こった核の存在が数例観察された。現在再確認中である。 4. 種々の令の接合胞子の核をDAPI染色し、また共焦点顕微鏡で核の形態と動向を観察した結果、約10日以降の接合胞子においては核がいくつかづつ集合し、次第に体積を減少させていく像が観察された。発芽直前には、すでに生残した核による減数分裂とそれに続く活発な核分裂が起こり、正常な体積の核が多数観察された。 平成11年度は、今年度得られた結果を再確認しながら、電子顕微鏡による接合胞子中の核の微細構造の変化、およびDNAの構造変化を種々の令の接合胞子で観察する。
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[Publications] Horie, Tadashi: "Development stage-dependent response of Pilobolus crystallinus sporangiophores to gravitative and centrifugal stimulation" Mycoscience. 39. 463-470 (1998)
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[Publications] Schimek, Christine: "Protein crystals in Phycomyces sporangiophores are involved in graviperception." Advances in Space Research. (1999)