1998 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の脳内光受容器を中心とした長期現象としての光の受容処理システムの解析
Project/Area Number |
10640659
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針山 孝彦 東北大学, 大学院情報科学研究科, 助手 (30165039)
|
Keywords | 脳内光受容器 / 微小脳 / 光情報 / per 抗体 / 昆虫 / 変態 / 休眠 / 複眠 |
Research Abstract |
昆虫は生活圏を地球上のあらゆる環境に拡大し、現在最も繁栄した動物群となっている。昆虫にとって環境情報のひとつである光は、短期的な現象を認識することに加え、日長の変化に対応した休眠・変態などの制御といった長期的な現象を認識するものとがあげられる。その長期変化を受容する器官は複眼の他に、おそらく脳内に別の器官の存在が示唆されてきたがその器官は不明だった。我々は本研究において甲虫のホタルを主に用いて、昆虫の脳内に光受容器が存在することを明らかにした。この光受容器官と、昆虫の変態・休眠との関係を明らかにすることにより、光の長期現象を生物がいかに認識するかを解明することを続けている。 計12種の甲虫の脳を解剖し、脳内光受容器の存在と構造を光学・電子顕微鏡を用いて観察した所、内6種では視葉で、3種で脳のcaudal側で、残りの3種では存在を確認できなかった。確認できたすべての光受容器で、マイクロビライがあり色素細胞で囲まれていた。この脳内光受容器官が光応答を示すことを確認するために、微小電極を用いて電気生理学的に光応答を記録した。すると、微弱光に反応する感度の高い応答性を示し、そのスペクトル応答極大(λmax)は530nmで、複眼のλmaxの560nm、380nmと異なっていた。つまり、脳内光受容器は複眼網膜視細胞とは目的の異なるスペクトル極大をもつものと考えられる。この脳内光受容器の役割を明らかにする為に、日周期現象に関係することが分かっているPer(period)抗体を用いて脳を免疫染色し脳内光受容器との位置的関係を明らかにした。ホタルでは、脳内光受容器が脳のcaudal側に一対あり、Per抗体ポジティブ細胞群はanterior側に一対あった。細胞内染色法により、脳内光受容器側からPer抗体ポジティブな細胞群のあるanterior側方向に伸びているAxonの配行を確認した。
|
-
[Publications] K.Ozaki: "A putative sugar-binding protein in the chemosensory organ of the fruitfly, Drosophila melanogaster." Interdisciplinary Information Sciences. 14. 79-83 (1998)
-
[Publications] T.Hariyama: "Chromophore distribution and ultraviolet visual pigment in the compound eyes of the Japanese fireflies Luciola cruciata and L. lateralis (Coleoptera, Lamphyridae)." J. Comp. Physiol A. 183. 165-170 (1998)
-
[Publications] T.Hariyama: "The brain as a photoreceptor : intracerebral ocelli in the firefly." Goettinge Neurobilogy Report. II. 418 (1998)
-
[Publications] A.Terakita: "Light-regulated localization of the beta-subunit of Gq-type G-protein in the crayfish photoreceptors." J. Comp. Phys'ol A. 183. 411-417 (1998)
-
[Publications] 針山孝彦: "ホタル脳内光受容器" 比較生理生化学. 15(3). 1-3 (1998)