1999 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の脳内光受容器を中心とした長期現象としての光の受容処理システムの解析
Project/Area Number |
10640659
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針山 孝彦 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (30165039)
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Keywords | 脳内光受容器 / 光情報 / 複眼 / 側単眼 / 微小脳 / ホタル / 甲虫 / 変態 |
Research Abstract |
完全変態の甲虫を主な材料とし、幼虫から蛹を経て成虫に至るまで基本的に同一の微小脳がどのように環境変化に対応し情報処理しているかに注目して研究を遂行している。 観察した甲虫の脳で、視細胞と同様の微絨毛構造を持つものが12種の内9種で確認された。ザリガニ、フナムシなどの甲殻類でも相同の器官が確認され、脳内光受容器が微小脳を持つ生物一般に広く存在することがわかった。 ホタル成虫の脳には左右一対の光受容器が存在し、複眼視細胞の微絨毛と同様の構造が観察される。脳内光受容器に電極を刺入し、スペクトル応答を記録した所λmaxは、530nmであり、高感度の応答を示した。起源を探るために、幼虫の側単眼と成虫の脳内光受容器の関係を電気生理学的・形態学的に解析した。幼虫側単眼は扁平なCuticleからなるレンズ系をもち、複雑に配行した微絨毛が続き近位側に色素細胞層をもつ。λmaxは脳内光受容と同様に530nmだった。蛹になる際に、側単眼のレンズから離れて、脳に引きこまれていくことが観察された。この過程をトレースするために、蛍光物質を視細胞に注入したものと側単眼視細胞全体を除去した個体を作成した。幼虫側単眼に蛍光物質を注入したものでは、蛹時期を経て成虫の脳内光受容器の視細胞に蛍光が観察された。また視細胞除去手術を行ったものでは脳内光受容器が消失していた。この側単眼視細胞除去手術により、成虫での脳内光受容器のみを除くことができるので、両方の幼虫側単眼を摘出し、成虫脱皮後での機能を見ようと試みた。片目にLucifer Yellowを注入したもの、片目を除去したものでは幼虫の操作によるダメージのためかLarvaからLarva-PupaのStageに移行できずに死亡するものがある程度見られたが、その後成虫まで個体数の減少はなかった。しかし両眼摘出の個体では、PupaからAdultに以降できずにPupaのまま死亡した。これらから、幼虫側単眼がPupaで脳に取り込まれた後、成虫脱皮に何らかの影響をもっていることが示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Y.Takaku: "Ultrastructural Observation of Adhering cell Pairs in Hydra"J exp Biol. 202. 2239-2244 (1999)
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[Publications] D.G.Stavenga: "Eye regionalization in the saty rid Bicyclus anynana coupled spectral characteristics of tapetum and photoreceptor screening pigment"Gottingen Neurobiology Report. I. 248-248 (1999)
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[Publications] Y.Takaku: "Adhesive ability between cells are increased after the initial cell-cell adhesion in Hydra"Natur wissen schaften. (in press).
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[Publications] D.G.Stavenga: "Spectral characteristics and regionarization of the eye of the satyrid Bicyclus anynana"Proc. NEV 2000 Wageningen meeting. I. 1-6 (2000)
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[Publications] 針山 孝彦: "節足動物の視覚系と外界との関係"比較生理生化学. 16(2). 86-97 (1999)