1998 Fiscal Year Annual Research Report
コケ植物における配偶体の形態的分類は分子データによってどの様に裏づけられるのか?
Project/Area Number |
10640683
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山口 登美夫 広島大学, 理学部, 助手 (60244290)
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Keywords | コケ植物 / シラガゴケ属 / 分類 / 系統 |
Research Abstract |
配偶体の形態が多様なホソバオキナゴケおよびそれと近縁なツクシシラガゴケについて,瀬戸内沿岸部から山地ブナ帯にかけて採集し,配偶体の詳細な形態測定を行い主成分分析および判別分析を行った.その結果,両種の形態的変異は連続しており,種レベルでは判別できないことが明らかになった.しかし,両種の区別点とされる茎と葉の形質のみで考慮すると,ホソバオキナゴケ型の個体群は内陸山地に,ツクシシラガゴケ型は沿岸部および内陸低地に偏って分布する傾向が認められた.このことからホンバオキナゴケ-ツクシシラガゴケ種群には生態型が存在することが示唆された. ホソバオキナゴケ-ツクシシラガゴケ種群の集団内および集団間の遺伝的変異を探るためにアロザイム電気泳動の予備的実験を試みた.10酵素について調べた結果,2酵素4遺伝子座について明瞭なバンドを得ることができた.今後はバッファーシステムを改良してさらに多くの遺伝子座を検出し,本種群内に予想される生態型の実体を明らかにする予定である. シラガゴケ属蘇類の系統を探る目的で各種の試料収集を行った.これまでに日本産7種の他,台湾,マレーシア,ハワイから数種のDNA抽出用試料を得た.日本産オオシラガゴケについてはrbcL遺伝子の抽出に成功した.今後はこれまでに得られた試料からrbcLの他,matKやITSの塩基配列を決定してシラガゴケ属蘇類の系統を明らかにするとともに,形態データとの関係を研究する計画である.
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