2000 Fiscal Year Annual Research Report
コケ植物における配偶体の形態的分類は分子データによってどの様に裏づけられるか?
Project/Area Number |
10640683
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山口 富美夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60244290)
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Keywords | コケ植物 / 分類 / 形態形質 / 分子データ / 系統 |
Research Abstract |
1.日本産シラガゴケ属蘚類の集団遺伝学的研究 形態的多様性を明らかにしたLeucobryum juniperoideum・humillimum種群の集団サンプリングを行い,アロザイム多型を用いて集団遺伝学的解析を行った.その結果,集団間の遺伝的分化は認められるものの,その遺伝的分化パターンは種の分類と一致していないことが明らかになった.この結果は日本産のL.humillimumは種レベルで分類できないことを示唆するものである. 2.日本産シラガゴケ属蘚類の系統学的研究 日本産シラガゴケ属蘚類7種について,葉緑体遺伝子のITS領域をマーカーにして系統学的解析を行った.その結果,(1)L.scabrum,L.javense,L.boninense,(2)L.juniperoideum,L.humillimum,L.glaucum,および(3)L.bowringiiの3つのクレードに分かれた.この系統樹のトポロジーは生殖器官の形成位置,葉先の細胞および中心束の形態形質と一致していることが明らかになった. 3.まとめ アロザイム多型をマーカーにした研究はLunularia cruciataで,また,DNAをマーカーにした系統学的研究は蘚類のHypnalesでも行った.これらの結果から,(1)蘚苔植物においては,形態分化と遺伝的分化が併行して生じていない場合が存在する,(2)蘚苔植物の分類学上重要視されてきた形態形質の中には系統を反映していないものがあることが明らかになった.
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[Publications] Tsubota,H.: "Preliminary phylogenetic relationships of the genus Brotherella and its allied genera (Hypnales, Musci) based on chloroplast rbcL sequence data"Journal of the Hattori Botanical Laboratory. 88. 79-99 (2000)
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[Publications] Itouga,M.: "Genetic structure of Lunularia cruciata (Marchantiales, Hepaticae)"Hikobia. 13. 219-224 (2000)