1998 Fiscal Year Annual Research Report
歯根歯頚部の計測値に基づく日本人の歯の大きさの時代的・地域的変異について
Project/Area Number |
10640692
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
真鍋 義孝 長崎大学, 歯学部, 助教授 (80131887)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
六反田 篤 長崎大学, 歯学部, 教授 (10047821)
|
Keywords | 歯の大きさ / 歯根歯頚部 / 時代的変異 / 地域的変異 / 日本人 / 歯の退化 / 小進化 / 渡来 |
Research Abstract |
咬耗・摩耗・齲蝕等の影響を最小限に抑えるために新しく設定した歯根歯頚部の計測法を用いて、日本列島住民の歯の大きさの時代的・地域的変異をもとに、日本列島住民の形成過程、および咀嚼器官の小進化に関する一連の研究を行っている。1万2千年前から約1万年近く続いた縄文時代内の時期的変化については既に明らかにしており、本課題では約2300年前に始まる弥生時代から現代にいたる時期的変化を明らかにすることを目的とした。 今年度は、九州大学、九州歯科大学および土井ヶ浜遺跡人類学ミュージアムにて調査を行い、各時代の人骨資料の資料収集を進めた。その際、人骨クリーニングと計測の補助および計測データの入力の作業は、研究補助として依頼した。その結果、既存の縄文時代の資料に加えて、山口県土井ヶ浜遺跡出土の弥生時代人、古墳時代人、現代人の歯冠と歯根歯頚部の大きさについて、統計的に耐えることのできる資料数の確保ができた。このデータをパーソナルコンピュータにて統計処理した結果、データ収集途中における中間結果ではあるが、以下のような興味深い結果が得られた。 1. 全体的な歯の大きさは、縄文時代早前期から中後晩期にかけて増大し、弥生時代にもさらに増大を続けて、古墳時代に最大となる傾向がみられた。しかし、その後現代へかけては逆に縮小傾向がみられた。この傾向は歯根歯頚部より歯冠の方に顕著であり、また頬舌径より近遠心径で顕著であり、さらに下顎より上顎で顕著であった。 2. 近遠心径に対する頬舌径の比率を表す歯冠示数では、弥生時代・古墳時代・現代より縄文時代の集団の方が大きい傾向を示し、近遠心的圧平が強いことが明らかになった。この傾向も歯根歯頚部より歯冠の方に顕著であり、また頬舌径より近遠心径で顕著であり、さらに下顎より上顎で顕著であった。 これらの変異の中には、弥生時代以降の大陸から渡来してきた集団の遺伝的影響と時代的小進化の両方を含んでおり、これらの変異を生じた要因について解明していくには、さらなる資料の追加が不可欠である。
|