1999 Fiscal Year Annual Research Report
歯根歯頚部の計測値に基づく日本人の歯の大きさの時代的・地域的変異について
Project/Area Number |
10640692
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
六反田 篤 長崎大学, 歯学部, 教授 (10047821)
|
Keywords | 歯の大きさ / 歯根歯頚部 / 時代的変異 / 地域的変異 / 日本人 / 歯の退化 / 小進化 / 渡来 |
Research Abstract |
日本列島住民の歯の大きさの時代的・地域的変異をもとに、日本列島住民の形成過程、および咀嚼器官の小進化に関する一連の研究を行っている。古人骨資料における咬耗・磨耗や現代人骨資料における齲蝕等が歯の計測値に与える計測誤差や欠損値の増加は、歯の大きさの研究に非常に大きな制約を与えている。これらを最小限に抑えるために新しく歯根歯頚部の計測法が考案され、約1万年間続いた縄文時代内の正確な時期的変化が既に明らかにされている(真鍋、1999)。本課題では縄文時代以降の弥生時代から現代にいたる時期的変化を明らかにする。 今年度も前年度に引き続き、九州大学、九州歯科大学および土井ケ浜遺跡人類学ミュージアムにて調査を行い、各時代の人骨資料のデータを収集して、追加した。人骨クリーニングから始め、歯および顎骨の計測、非計測的形質の観察を終了後、計測および観察データをパーソナルコンピュータに入力し、統計処理を行った。その結果、現段階では以下のようなことが示唆された。 概して、全体的な歯の大きさは、縄文時代早前期から中後晩期にかけて増大することがわかっているが、弥生時代へもさらに増大を続けて、古墳時代で最大となる傾向がみられた。しかし、その後現代へかけては逆に縮小していく傾向がみられた。この傾向は歯根歯頚部より歯冠の方に顕著であり、また頬舌径より近遠心径において顕著で、さらに下顎より上顎で顕著であった。 これらの変異の中には、弥生時代以降に大陸から渡来してきた集団の遺伝的影響と時代的小進化の両方の要因を含んでいるが、これらの変異を生じた要因について解明していくには、渡来系と在来系で別々に分析を行う必要があり、さらなる資料の追加が不可欠である。また、現段階では地域的変異を考慮に入れず、時期的変異のみを取り扱っているが、両方の変異を同時に分析することにより、二次元的に解釈をしていくことが、今後の課題である。
|