1998 Fiscal Year Annual Research Report
巨大磁気抵抗磁性体のナノ構造制御と低次元物性に関する研究
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10650007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松井 正顯 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90013531)
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Keywords | 磁気抵抗効果 / 磁性体 / エピタキシャル薄膜 / 低次元 / Mn酸化物 / ナノ構造制御 / ペロブスカイト型化合物 / トンネル効果 |
Research Abstract |
本年度は、巨大磁気抵抗磁性体のナノ構造制御の基礎検討として、ペロブスカイト型Mn酸化物(LaCa)_<n+1>Mn_nO_<3n+1>系における層数n=2,3,∞のエピタキシャル薄膜を作製し、微細構造(次元性)と磁気伝導物性の関係を調べた。この結果、層数nの低下すなわち次元性の低下に伴って、電気抵抗の増大、強磁性転移温度の低下、磁気抵抗効果の増大など、系統的な物性変化が生じることを見出した。特に、低次元系のn=2では、3次元系のn=∞に比べ、低磁場での磁気抵抗効果が著しくエンハンスされ、準2次元的な強磁性スピン秩序と異方的な電気伝導の導入が、磁気抵抗効果の改善に有効であることを明らかにし、この物質系の巨大磁気抵抗効果の機構解明および応用の両面から重要な知見を得た。 また、巨大磁気抵抗磁性体では、電気伝導、スピン秩序、格子歪みが相互に密接に影響しているため、薄膜と基板との格子不整合による歪みが薄膜の磁気伝導物性に及ぼす影響について検討した。格子不整合の異なる各種の基板上に作製したエピタキシャル薄膜の特性評価から、格子不整合の大きさとその符号に応じて、強磁性転移益度や磁気抵抗効果が大きく変化することを見出した。すなわち、正の格子不整合の場合には、強磁性転移温度の低下と磁気抵抗効果の増大が、負の格子不整合の場合には、強磁性転移温度の上昇と磁気抵抗効果の減少が見られることが分かった。特に、低次元系のn=2では、3次元系に比べ、格子歪みの影響が強く現れるといった興味深い結果も得られている。以上の結果は、格子不整合歪みが、この物質系の物性を制御するための新しいパラメーターとなることを意味している。 さらに、巨大磁気抵抗Mn酸化物のスピン偏極率が百%という特徴を生かせば、トンネル型磁気抵抗素子をはじめとする各種の高性能スピンデバイスの実現が期待できる。ここでは、Mn酸化物を用いた強磁性体/絶縁体/強磁性体積層構造のトンネル型磁気抵抗素子の作製を検討した。リソグラフィー技術を用いて微細構造に加工することにより、明瞭なトンネル型磁気抵抗効果を示す素子を得ることに成功し、積層型スピンデバイスへの応用の可能性を示した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hidefumi Asano et al.: "Magnetotransport in perovskite series La_<n-nx>Ca_<1+nx>Mn_nO_<3n+1> ferromagnets" Physical Review. B57. 1052-1056 (1998)
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[Publications] Hidefumi Asano et al.: "Magnetotransport in thin films of La_<n-nx>Ca_<1+nx>Mn_nO_<3n+1> (n=2,3,and ∞)" Materials Research Society Symposium. 494. 131-136 (1998)
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[Publications] 浅野秀文 他: "ペロブスカイト型La_<n-nx>Ca_<1+nx>Mn_nO_<3n+1>強磁性体の磁気・伝導物性" 日本応用磁気学会誌. 22. 107-114 (1998)
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[Publications] 早川 純 他: "La_<n-nx>Ca_<1+nx>Mn_nO_<3n+1>薄膜の磁気的・電気的性質" 日本応用磁気学会誌. 22. 401-404 (1998)
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[Publications] Jun Hayakawa et al.: "Strain effect in La_<1-x>Ca_xMnO_3 thin films" Journal of Magnetic Society of Japan. 23. 102-104 (1999)
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[Publications] Jun Hayakawa et al.: "Strain effect in La_<n-nx>Ca_<1+nx>Mn_nO_<3n+1> thin films" Journal of Magnetic Society of Japan. 23(In press). (1999)