1998 Fiscal Year Annual Research Report
クラスターイオンによる固体電子の励起とエネルギー付与
Project/Area Number |
10650060
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
金子 敏明 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40158853)
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Keywords | クラスターイオン / エネルギー損失 / クラスター粒子数効果 / 電子的阻止能 / 波東モデル / 誘電関数 / 炭素薄膜 |
Research Abstract |
今年度は、クラスターを固体に入射したとき電子的エネルギー損失における「クラスター粒子数効果」を波束モデルに基づいて調べた。入射エネルギーが核子あたり0.8MeVで炭素薄膜を通過したホウ素クラスターイオンBn^+(n=2-4)のエネルギー損失ΔE(Bn)を同じ速度の単一ホウ素イオンB^+のエネルギー損失ΔE(B)との比R=ΔE(Bn)/ΔE(B)の値を膜厚の関数として計算した。鳴海らの実験では膜厚が約10μg/cm^2以下のときにいずれのクラスターに対してもR>1となり「クラスタ一粒子数効果」が現れた。しかし計算では、クラスターが進行方向に対してある配向(クラスター平面が進行方向に乗直な配向)を仮定しない場合には実験データを説明できないことがわかった。また、炭素クラスターイオンCnに関しては1イオンあたりの入射エネルギーEが1.5(MeV)<E<5.5(MeV)では、線形構造よりも菱形構造の方がエネルギー損失比Rの値が大きくなり、Baudinらの実験データと比較すると線形構造の方が一致の程度がよいことがわかった。また、窒素分子イオンN^<2+>が炭素薄膜を通過したときのエネルギー損失比Rの値を、高周波近似での誘電関数と点電荷モデルとに基づいて計算した。ただし、あらたに荷電状態が非平衡であることを取り入れた結果、膜厚が薄いところではR<lであり、それが増加するにつれてR=1に漸近する傾向が現れた。これはSteuerらの実験データとよく一致するものであるが、モデルが単純であったために、今後はより詳細なモデルで再計算する予定である。
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[Publications] Toshiaki Kaneko: "Energy-loss of swift boron and carbon clusters in solids" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. (1999)
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[Publications] T.Takamoto and T.Kaneko: "Energy loss of molecular ions penetrating solids" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. (1999)