1998 Fiscal Year Annual Research Report
筋肉のHodgkin-Huxley方程式を用いたミオトニーの温度依存性の解析
Project/Area Number |
10650064
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
寺田 和子 東邦大学, 医学部, 助手 (10217424)
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Keywords | Hodgkin-Huxley方程式 / 筋肉 / 分岐 / ミオトニー / 温度 / mclination-flip / homoclinic分岐 / 周期倍分岐 |
Research Abstract |
筋緊張症(ミオトニー)および周期性四肢麻痺症という筋疾患には、寒冷により症状が悪化するタイプと、症状が温度に依存しないタイプがある。このことは、ミオトニア・パラドックスと呼ばれ、何故生じるか説明がついていない。 本研究の目的は、温度依存性のある骨格筋細胞膜に関するHodgkin-Huxley方程式(以下でHHM式とする)を用いてこの現象が生じるメカニズムを明らかにすることである。 本年度は、哺乳動物を扱う前の予備的検討として、式のパラメータが一つのまとまった実験で求められているカエルのHHM式を対象とし、式に現れるパラメータのうち二つまでを組にして変化させたときの分岐現象を、力学系の理論を援用しつつ、数値計算により調べた。 まず、従来から扱っている温度22度で、Naチャネル不活性化過程の温度依存性を規定するパラメータVhとリークコンダクタンスgl(それぞれ低温で悪化するタイプ、しないタイプに関連)を変化させたときの分岐現象を調べ、正常な一回の発火が生じるパラメータ領域、筋緊張に対応する反復発火が生じる(すなわち周期解が存在する)領域、筋麻痺に対応する脱分極電位の安定平衡点に収束が生じる領域の範囲と、これらの領域の境界となる分岐現象がhomoclinic分岐およびdouble cycle分岐であることを明らかにした。特に、3領域の三叉点となる分岐点はinclination-flip分岐点と考えられ、この点の近傍で周期倍分岐の連鎖が生じていることがわかり、数理的にも興味深い。また、温度6度の低温でも同じパラメータで分岐図を描いたが、温度依存性について知られている現象と対応する結果は得られなかった。これは、元来、正常な現象が生じるパラメータ範囲の広いカエルのHHM式での現象であるので、来年度以降、哺乳動物のパラメータのHHM式で検討を行う必要が確認された。
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[Publications] 寺田和子,田中久陽,吉澤修治: "筋肉のHodgkin-Huxley方程式の2パラメータ分岐" 電子情報通信学会論文誌(A). J81-A・10. 3010-3017 (1998)
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[Publications] 寺田和子,栗原照幸: "筋強直症,周期性四肢麻痺への数理的アプローチ" BME(日本ME学会雑誌). 12・5. 58-66 (1998)
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[Publications] Terada K, Tanaka H, Yoshizawa S: "Theoretical Analysis of Muscle In Channel Diseases" 1998 Internatinal Symposium on Nonlinear Teary and its Applications. vol.1. 51-54 (1998)
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[Publications] 寺田和子,吉澤修治,西村千秋: "筋細胞膜のHodgkin-Huxleyモデルの解析(5)-周期倍分岐の連鎖" 医用電子と生体工学. 36・Suppl.608 (1998)
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[Publications] 寺田和子,吉澤修治: "筋細胞膜のHodgkin-Huxley方程式での周期倍分岐の連鎖" 生物物理. 38・Suppl.2. S189 (1998)